研究課題/領域番号 |
23790445
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
伊藤 利洋 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00595712)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | インフルエンザウィルス / エピジェネティクス / 免疫病理学 |
研究概要 |
マイクロアレイ解析では、インフルエンザウィルスの刺激を受けたこれらの細胞はH3K9のメチル化(転写抑制)を誘導する酵素SET domain, bifurcated 2 (SETDB2)の有意な上昇を認めた。さらにはインフルエンザウィルス感染防御に必須な気道上皮細胞でもこのSETDB2の発現上昇が認められた。この事実はインフルエンザウィルス感染時に気道上皮細胞やマクロファージがヒストン化学修飾を受けSETDB2が転写制御の抑制に関与することを示唆しており、気道上皮細胞とマクロファージの両者にSETDB2の有意な発現上昇が認めたことは、SETDB2がインフルエンザウィルス感染に非常に重要な因子であることが示唆された。 またSETDB2発現上昇はインフルエンザウィルスならびにIFN-Iによる刺激後に認められ、IFN-Iレセプター欠損マウス(IFN-αR KO マウス)に上記刺激にて、SETDB2の発現上昇が認められなかったことから、SETDB2の発現はIFN-I依存性であることが見出せた。 次にマクロファージと気道上皮細胞に対して、SETDB2をsiRNAシステムを用いて、ノックダウンを行い、マイクロアレイ解析からIFN-Iにより誘導され抗ウィルス作用を発揮するISG との関与が報告されているAnp32aと、サイトカインシグナル伝達に関与するTNF-R1に有意な変化が認められた。 以上のことから、SETDB2のインフルエンザウィルス感染時における役割を見出すことは将来の創薬や予防に重要な研究と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画はインフルエンザウィルス感染によるヒストン化学修飾に関わる酵素、転写因子の同定と役割をin vitroから解析を行うことであった。ヒストン化学修飾に関わる酵素としてSETDB2を見出し、マクロファージだけではなく気道上皮細胞にも見出せたこと、SETDB2の発現はIFN-I依存性であることが見出せたこと、ならびにSETDB2のノックダウンを行い、マイクロアレイ解析からAnp32aとTNF-R1の2つの因子の関与を見出せたことは(1)当初の計画以上に進展している。ものと考える。 ただし、クロマチン免疫沈降(ChIP: chromatin immunoprecipitation)法により、インフルエンザウィルス刺激によるヒストン修飾や転写因子のクロマチン上での局在を調べようと試みたが、データにばらつきが多く、検討が必要と考える。 以上のことをふまえ、現段階では(2)おおむね順調に進展している。ものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
上記でまだデータがうまく得られなかったクロマチン免疫沈降(ChIP: chromatin immunoprecipitation)法により、インフルエンザウィルス刺激によるヒストン修飾や転写因子のクロマチン上での局在の検討と推移して、in vivoでの解析を今後の推進方策として行っていく。 具体的にはインフルエンザウィルス感染モデルにおけるヒストン化学修飾解析ならびに、インフルエンザウィルス感染に併発する二次感染モデルの病態を明らかにし、予防ならびに治療の可能性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費 1,340,000円旅費 60,000円その他 200,000円 計 1,600,000円物品費には実験動物(飼育費込み、免疫試薬(抗体等)、サイトカイン測定関連、リアルタイムPCR測定関連、遺伝子解析試薬(siRNAやその関連試薬)、プラスチック品が含まれる。旅費には日本免疫学会への参加が含まれており、その他には論文投稿が含まれる。
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