研究課題/領域番号 |
23790447
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大山 陽子 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 特任助教 (20583470)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | HMGB1 / 肉芽腫性腎炎 |
研究概要 |
遺伝子転写やDNA安定化など核内で作用すると考えられていた核蛋白が、ひとたび細胞壊死やマクロファージからの分泌などにより細胞外へ放出されると、一転して組織の炎症を惹起し増幅させ、個体死をも引き起こすという、全く新しい核蛋白作用の概念が形成されつつある。我々はその代表的核蛋白であるHMGB1(High Mobility Group Box-1 Protein)がマクロファージ主体の肉芽腫において、炎症の慢性化、遷延化の惹起、ひいては臓器不全をも引きおこすことを結晶誘発性肉芽腫性腎炎動物モデルを用い明らかにしてきた(Oyama Y et.al. Lab Invest. 2010)。引き続き我々は、HMGB1を軸とした肉芽腫炎症における免疫応答メカニズムの解明をテーマに、HMGB1制御による肉芽腫炎症治療効果の検証、さらに他肉芽腫疾患における本制御メカニズムの普遍的な応用の可能性の検証を行っている。平成23年度は、HMGB1が惹起する肉芽腫性腎炎に対し、治療の観点から研究を行った。*HMGB1抑制による効果の検証 =抗HMGB1抗体を用いて=我々はin vitroにおいてHMGB1刺激による炎症性サイトカインの放出促進を尿細管上皮細胞において確認し、さらに抗HMGB1抗体によってその放出を有意に抑えるということを確認している。今回In vivoでの検証をすべく、肉芽腫性腎炎動物モデルを用い生食投与群、抗HMGB1抗体群を作成しそれぞれの腎機能、および炎症性サイトカインを測定、抗HMGB1抗体が肉芽腫性腎炎の治療に有用かどうかの検証を行った。抗体の精度を確認しながらの実験のため、現在までのところまとまったデータを報告できるまでには至っていないが、引き続き抗体やHMGB1の分泌抑制が報告されている薬剤などを用いHMGB1抑制による腎炎治療の可能性を探っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は計画に従って、「腎肉芽腫動物モデルを用いHMGB1抑制による肉芽腫性腎炎への効果について検討」をテーマにHMGB1が惹起する肉芽腫性腎炎に対し治療の観点から抗体を用いた実験を行ったが、抗体の精度を確認しながら進めたということもあり、当初の予定よりはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で一定の研究成果を上げるためには、より多角的なアプローチが必要であると思われる。我々は、肉芽腫炎症制御を「HMGB1抑制の観点」から研究に取り組んでいる。引き続きHMGB1自体の制御は抗体ほか、HMGB1と結合することで全身的な炎症惹起を抑制するとされるThrombomodulinやHMGB1放出抑制薬剤、ほか腎炎治療薬などもう少し幅を広げて検討するのに加え、HMGB1の受容体として知られるRAGE、TLR2、TLR4抑制の観点からも(それら受容体発現部位や時期の探索も含めて)アプローチを試みる予定である。また新たなアイデアとしては、使用するモデルが結晶誘発性肉芽腫性腎炎動物モデルであるということもあり、結晶など異物を認識する細胞内シグナルとして近年注目されているインフラマソームの関与なども検討できればと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
頂いた研究費は計画書に沿って培養関連試薬、PCR関連試薬、DNA・RNA抽出及び精製試薬、電気泳動試薬、組織免疫染色試薬、ELISAキット、実験動物・飼料、培養関連器具等の購入、および情報収集のための旅費、航空貨物運賃、英文校正料などに充てる。
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