引き続き我々は、HMGB1(High Mobility Group Box-1 Protein)を軸とした肉芽腫炎症における免疫応答メカニズムの解明をテーマに、HMGB1制御による肉芽腫炎症治療効果の検証を行った。前年度は抗体による治療について重点的に実験を試みるも、精度の高い抗体を得ることが困難であったため、アプローチ法を変更し、今年度は結晶誘発性肉芽腫性腎炎における炎症のメカニズム解明に的を絞って検討を行った。 我々は内皮細胞上のThrombomodulin(TM)がHMGB1に結合することで、HMGB1を局所に封じ込め全身化を防いでいることを報告している。そこで本腎炎モデルでのHMGB1とTMの関係を確認するため、HMGB1の放出、および炎症の場である腎臓内のTMの発現を確認した。結果、時間依存性に有意なTM発現増加がみられた。このことより、肉芽腫内で放出されたHMGB1を局所にとどめるための防御機構が働いている可能性が考えられた。 酸化ストレスは慢性腎疾患の進行に寄与しており、また活性酸素によりHMGB1が放出されることが報告されている。そこで、肉芽腫炎症におけるHMGB1関与解明の1つとして、活性酸素との関連について検討を行った。結果、濃度依存性に血中の活性酸素上昇がみられ、腎組織中の活性酸素量も有意な上昇を認めた。活性酸素生成酵素として、NADPHオキシダーゼ(NOX)が知られている。7つのアイソフォーム(NOX1-7)があり、中でもNOX4は腎組織に高発現している。腎組織内の活性酸素量が増加していたことから、腎組織内のNOX4発現を観察した。結果、時間依存性に有意な減少を認めた。NOX4は腎障害を悪化させたという報告もある一方、腎保護的に働くといった報告もある。本データの解釈を含め、HMGB1とNOX4発現及び肉芽腫性炎症との関連を解明することが次なる課題である。
|