遺伝子転写やDNA安定化など核内で作用すると考えられていた核蛋白が、ひとたび細胞壊死やマクロファージからの分泌などにより細胞外へ放出されると、一転して組織の炎症を惹起し増幅させるという全く新しい核蛋白作用の概念がもたらされている。我々はその代表的核蛋白であるHigh Mobility Group Box-1 Protein(HMGB1)が肉芽腫炎症の一つのメディエーターであり、炎症の慢性化、遷延化の惹起、ひいては臓器不全をも引き起こすことを明らかにしている。本研究では、さらなる肉芽腫炎症発展メカニズムの解明を目指すべく結晶誘発性肉芽腫性腎炎動物モデルを用い検証を行った。=腎肉芽腫炎症におけるHMGB1の臓器障害メカニズムとその制御機構=肉芽腫治療を考慮した際に、その炎症性メディエーターであるHMGB1制御は必要不可欠である。HMGB1抑制を観点に、通常の腎炎モデルに加えHMGB1過剰投与群も作成し、下記の検討を行った。 (1) HMGB1受容体であるRAGE(Receptor for Advanced Glycation Endproducts)、Toll-like receptor (TLR) 2、4の発現およびHMGB1過剰投与下におけるそれら発現の変化 (2) 腎炎動物モデルを用い、抗HMGB1抗体投与群を作成。生食投与群をコントロールとして腎機能、炎症性サイトカインの測定、および病理組織像など多角的な検証による抗HMGB1抗体の肉芽腫性炎症治療薬としての可能性の探求 (3) 本肉芽腫炎症におけるThrombomodulin(TM)関与の有無 (4) 本肉芽腫炎症における活性酸素の関与およびその炎症惹起機構の検討 今回の研究結果より、HMGB1受容体、ならびにTMは肉芽腫炎症の治療のターゲットとなる可能性が示された。
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