研究概要 |
アレルギー発症におけるアレルゲン特異的Th2細胞が誘導されるメカニズムは不明である。本研究では好塩基球がIgE依存性にTh2細胞を誘導することで、一つの抗原がアレルゲンになることをきっかけに、多様な抗原に対してもTh2誘導、IgE産生する機序を明らかにすることを目的とする。 前年度に好塩基球が抗原特異的にIL-4を産生すること、DNP-HSA/alumで免疫したマウスにDNP-OVA, OVAを投与するとOVA特異的IgEを誘導できることを示した。 最終年度は、免疫複合体でTh2細胞が誘導されるメカニズムを抗原提示細胞に焦点をあてて解析した。IgE免疫複合体(IC)免疫における好塩基球と樹状細胞の関与を調べるため、CD11cDTRマウスの骨髄細胞を野生型マウスに移植し、DTを投与して樹状細胞を欠損するマウスを作製した。樹状細胞除去後、DO11.10 CD4陽性T細胞とICを投与してOVA特異的T細胞応答を検討したところ、樹状細胞欠損マウスではT細胞の反応は減弱していた。一方、DNP-HSA/alumで免疫したマウスにDNP-OVA, OVAを投与してOVA特異的IgEを誘導する系に、抗FceRIa抗体投与によって好塩基球を除去するとIgE産生が抑制された。ICを投与した場合、ICは好塩基球と樹状細胞の両方に取込まれ、抗原提示をしてT細胞を活性化し、好塩基球由来のIL-4によってTh2誘導あるいはB細胞クラススイッチが起こっていると考えられる。 本研究により、ハプテンなど抗原の一部に共通のIgEエピトープがあれば、IgEがアジュバントとなって新たな抗原に対するIgEが作られることが明らかとなった。このメカニズムにより多様な抗原に対してIgEを産生してアレルギーを引き起こす可能性があることから、IgEや好塩基球をターゲットとしたアレルギー治療戦略が有効と考えられる。
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