研究課題/領域番号 |
23790453
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
寺原 和孝 国立感染症研究所, 免疫部, 研究員 (50469954)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ヒト化マウス / HIV-1 |
研究概要 |
まず、ヒト化マウス由来CD4 T細胞のHIV-1感染性についてin vivo・in vitroでの評価を行なった。in vitroでのfusion assayからX4 HIV-1はナイーブ、メモリーサブセットいずれのCD4 T細胞に侵入可能であるのに対し、R5 HIV-1の宿主細胞への侵入はCCR5を発現するCD4 T細胞メモリーサブセットに特異的であることが認められた。このようなR5・X4 HIV-1それぞれの感染指向性はヒト化マウスにおけるin vivoでの解析においても確認された。また、in vivoにおいてCD4 T細胞セントラルメモリーサブセットがR5 HIV-1の感染・複製を規定する重要な細胞群であることが明らかとなった。 また、R5・X4 HIV-1同時感染ヒト化マウスにおける感染様式の解析において、R5 HIV-1は血中に恒常的に認められるのに対し、血中におけるX4 HIV-1の検出は一過性であり、ヒト化マウスにおいてR5 HIV-1優勢な感染形態が確認された。そして、細胞レベルでの解析から、CCR5発現CD4 T細胞におけるX4 HIV-1の感染性がR5 HIV-1共存下で抑制されることを見出した。なお、R5 HIV-1の感染様式はX4 HIV-1共存下でも影響を受けなかった。 さらに、これまで我々が開発した蛍光レポーター発現HIV-1の更なる有用性について検討した結果、蛍光レポーターのシグナル強度がウイルス複製量を反映することが明らかとなった。また、ウイルス複製進行中の感染細胞の同定において、従来のHIV-1 Gag発現を指標とするよりも蛍光レポーターを指標とすることが感度・信頼性の点で優れていることが明らかとなった(Terahara et al., Front. Microb. 2012, 2, 280)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に掲げた計画のうち、研究実績の概要で述べた課題については非常に重要な知見が得られ、既に1報の研究論文を公表するに至り、他にも現在、2報の研究論文を執筆中である。平成23年度の計画では他に「HIV-1潜伏感染プール形成についての解析」、ならびに「HIV-1潜伏感染プール形成における樹状細胞を介したHIV-1伝播の影響についての解析」を掲げており、これらについては現在進行中であるものの、先の研究結果を踏まえることにより、当初の実験計画よりも洗練された実験が遂行可能となった。以上のことから、現在までの達成度はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度の計画に掲げた「HIV-1潜伏感染プール形成についての解析」、ならびに「HIV-1潜伏感染プール形成における樹状細胞を介したHIV-1伝播の影響についての解析」については早急に解析を完了することを目指す。さらに平成24年度は、HIV-1の潜伏感染形態が病原性の発揮にどうのように影響するのかをヒト化マウスで解析する。得られた研究成果については逐次、学会、ならびに研究論文誌上にて発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に予定していた一部の研究計画については現在も進行途中であることから、平成23年度に使用を予定していた研究費の一部は平成24年度に繰り越すこととなった(48万円)。平成24年度はこの繰り越し分を含め、148万円の研究費を請求する。その内訳として、主に、ディスポーザブル実験器具、細胞培養関連試薬、組織学的解析関連試薬、抗体等を含むフローサイトメトリー解析関連試薬等の実験に必要な消耗品に物品費として118万円を充てる。また、研究成果の発表に係る学会参加費・旅費に15万円、論文投稿に係る費用に15万円を充てる。
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