研究概要 |
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は、HIVゲノムが標的宿主細胞のゲノムへ取り込まれることで潜伏化が成立する点が他の感染症とは異なる大きな特徴であり、静止期CD4+メモリーT細胞がHIV潜伏感染の主要なリザーバーであると考えられている。しかしながら、潜伏感染の形成機序に関しては明らかにされていない。そこで本研究ではHIV-1感染ヒト化マウスモデルにおけるin vivoでの解析を中心に行い、HIV-1潜伏感染形成機序を明らかにすることを目的とした。 まず、CXCR4指向性(X4)ウイルスとCCR5指向性(R5)ウイルスについてそれぞれ異なる蛍光レポーター遺伝子(EGFPおよびDsRed)を組み込んだウイルスを作製し、フローサイトメトリーによるウイルス感染細胞の同定が従来のp24抗原染色法と比較して簡便かつ確実となり、また、レポーターの蛍光シグナル強度がウイルス複製量の評価に有用であることも示した(Terahara et al., Front. Microbiol., 2012)。 さらに、ヒト化マウスへのHIV-1感染実験の解析から、活性化メモリーCD4陽性T細胞がR5ウイルスの主たる標的であり、その活性化レベルが血中ウイルス量に反映されることを示した。加えて、樹状細胞やマクロファージなどの骨髄系細胞の分化レベルがウイルス伝播の効率に関与することも示唆された(Terahara et al., PLoS One, 2013)。さらに、ヒト化マウスにおけるX4およびR5ウイルスの感染性を評価した結果、CCD5陽性CD4陽性T細胞に対するX4ウイルス感染がR5ウイルス共存下で抑制されることを認めた。この結果は感染急性期におけるR5ウイルスの優先的な増幅・潜伏化に対する一つの要因を示すものと考えられた(Terahara et al. 投稿準備中)。
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