研究概要 |
本研究年度は、主としてネズミマラリア感染モデルを用いた①臓器毎のSR遺伝子発現解析、②感染致死群と回復群における単核球/マクロファージ (Mφ) および脾臓での発現遺伝子パターンの比較解析を行った。 【研究の方法】①ではPbANKA感染後3および7日に臓器からRNAを回収し、SRについてRT-PCRおよび定量PCRにて遺伝子発現量の比較ならびに免疫組織化学にて臓器内のSR発現部位を観察した。②について、Py17XL/129svマウス感染系を用、致死群および感染回復群のMφおよび脾臓からRNAを回収した後マイクロアレイにより発現遺伝子の解析を行った。 【結果と考察】①SR遺伝子の定量PCRの結果、CD36遺伝子発現は変動しなかったが、肺・脾臓・肝臓でのMARCOの遺伝子発現増強が顕著であった。免疫組織化学的解析によるMARCOの局在は、脾臓では辺縁帯Mφ、肝臓では肝細胞および血管内皮細胞で観察された。この結果は、臓器毎の利用分子群の組み合わせによる臓器毎の病態形成が重症マラリアを形成するとの我々の仮説を支持するものと考えられた。②Mφ表現型に関する遺伝子では、致死群においてM2a Mφの誘導が推測されたが、回復群では、IL-4R-α, Ym1, IL-10遺伝子発現低下、RELM-α, A2A 受容体, PTX3, TGF-β遺伝子発現上昇が観察され、M2c Mφの誘導とMφ表現型スイッチングの可能性が示唆された。脾臓での発現遺伝子解析の結果、59304遺伝子中5893遺伝子の発現上昇および352遺伝子の発現低下が観察され、B細胞活性化、ADCC増強およびNK細胞活性化に関する遺伝子が含まれていた。以上の結果から、感染回復には、M2c型のMφへのスイッチング、B細胞の活性化とADCC増強による原虫感染赤血球貪食の昂進、NK細胞の関与による排除機構が働いていると推察された。
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