研究課題/領域番号 |
23790460
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
加藤 健太郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (50508885)
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キーワード | 腸管寄生原虫 / 宿主粘膜糖鎖 |
研究概要 |
本年度は本研究対象である赤痢アメーバレクチンならびにクリプトスポリジウムレクチンを組換え型タンパク質としてすべて大腸菌を用いて発現させることができた。昨年度までの問題点は大腸菌を用いて発現させた赤痢アメーバレクチンの糖鎖認識能が低いということであったが、糖鎖認識能を検出するための実験系を改良(単糖から糖タンパク質を用いる系に変更)したことにより低い糖鎖認識能であっても検出が可能となった。 また当初は赤痢アメーバレクチンを構成するサブユニットであるHgl、Lgl、Iglのうち、糖鎖認識能を有することがすでに報告されているHglのみを研究対象としていたが、Iglも糖鎖認識能を有することを示唆するデータが得られ、Iglを研究対象として含めることにした。このことは赤痢アメーバ感染におけるIglの関与を示唆するものであり、本研究の今後の発展が期待できる。 現在、56種類の合成MUC2糖ペプチドをプレートに固相化することが可能な状態であり、来年度の早い段階でIglを含めた各腸管寄生虫レクチンの糖鎖認識特異性が明らかとなると考えている。 昨年度、マウス3系統における赤痢アメーバ感染感受性の違いは腸管粘膜糖タンパク質上の糖鎖構造によることを明らかにしたが、その糖鎖構造に含まれるシアル酸が重要な役割を果たしていることを明らかにでき、このことは赤痢アメーバ感染阻害を考えていく上での重要な知見であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していた以下の点について自己評価を行った。 1.昨年度、大腸菌を用いて得た組換え型赤痢アメーバレクチンの糖鎖認識能が非常に低く赤痢アメーバ原虫の細胞膜を用いる実験系の構築を行い、その系を用いた研究への変更を考えていたが、糖鎖認識能を検出する際に単糖ではなく糖タンパク質を用いたところ、赤痢アメーバレクチンの糖鎖認識能を検出することができた。このことは当初の研究計画に基づき今後も進むことができるので非常に満足している。 2.当初、赤痢アメーバレクチンとしてすでに糖鎖認識能があることが判っていたHglのみを使用しようと考えていた。しかしながら赤痢アメーバレクチンのサブユニットの一つであるIglにも糖鎖認識能が見いだされた。このことは本研究の対象が増えるという意味でも満足している。 3.本研究計画で用いる予定であった腸管寄生原虫レクチンをすべて組換え型タンパク質として得ることができたのは満足しているが、本年度の間に糖鎖認識特異性に関する予備実験をやっておきたかった。 以上の点よりおおむね研究計画通りに順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究対象であるすべての腸管寄生原虫レクチンを組換え型として得られたので、56種類の合成MUC2糖ペプチドを固相化したプレートを用いて各レクチンの糖鎖認識特異性を明らかにする。その中で有意に親和性が高い糖ペプチドを用いてin vitroおよびin vivoでの腸管寄生原虫感染阻害実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額として103963円が生じたのは所属機関に設置されているウルトラマイクロ天秤が故障しており合成糖ペプチドの計量ができない状態が3か月以上続いていたことと所属機関附属動物実験施設の閉所および共同動物実験施設への移行に1年を要したことで研究の進行が著しく遅れたことによる。そのため、次年度は繰り越し金額をin vivoでの感染阻害実験を行う際の実験動物購入費に当てる予定である。また、消耗品として主に原虫および大腸菌の培養関連製品や合成糖ペプチドの追加合成に必要な試薬の購入を考えている。 現在、本研究の成果の一部を論文として投稿しているが、それが受理された場合や国内外の学会および誌上において発表する際の費用として用いる。
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