本年度は赤痢アメーバ感染感受性の異なるマウス3系統から腸管粘膜糖タンパク質(ムチン)を粗精製し、赤痢アメーバに対する感染感受性が高いCBAマウス由来ムチンに対して赤痢アメーバ細胞膜の親和性が高く、感染感受性が低いC57/B6マウスやBALB/cマウス由来ムチンに対しては赤痢アメーバ細胞膜の親和性が低いことを明らかにした。また、赤痢アメーバ感染感受性の低いマウス由来ムチン上糖鎖構造にはシアル酸が多く存在したため、それらムチンをシアリダーゼ処理した後に赤痢アメーバ細胞膜との親和性を測定したところ、赤痢アメーバ細胞膜との親和性が増加したことから、赤痢アメーバ感染感受性は腸管粘膜糖鎖上のシアル酸により既定されていることが明らかとなった。この研究成果は誌上で発表した。 本研究当初から試みていた組換え型赤痢アメーバレクチンの作成に関しては、糖鎖認識能を有するとの報告があるHglの部分配列を大腸菌で発現させ精製を試みたが、やはり糖鎖認識能を有する組換え型タンパク質を得ることができなかった。そこで糖鎖認識能を有することが報告されている別の赤痢アメーバレクチンであるIglを組換え型タンパク質として作成したところ、糖鎖認識能を有する組換え型タンパク質として得ることができたため、Iglの糖鎖認識部位の同定を現在進めている。今後はIglを標的として本研究を遂行していく予定である。
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