研究課題/領域番号 |
23790462
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
井上 信一 杏林大学, 医学部, 助教 (20466030)
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キーワード | マラリア原虫 / 樹状細胞 / γδT細胞 / 造血細胞 / IFN-γ |
研究概要 |
マラリアは熱帯・亜熱帯地域に流行し、毎年約3億人の罹患者と100万人以上の死者を出している世界で最も被害の大きな感染症の一つである。マラリアの発症は、マラリア原虫が赤血球に感染し増殖・破壊を繰り返す事によって起こる。マウスマラリアモデルを用いた研究を中心にして、宿主内では、様々な免疫担当細胞が連携して働く事により、マラリア原虫に対する防御をおこなっていることが徐々に解明されてきている。一方で、それら免疫担当細胞の多くを供給する造血細胞(前駆細胞・幹細胞)は、マラリア原虫感染によってその動態がかなり大きく変動するにもかかわらず、その分子メカニズムや病態への影響はほとんど明らかにされていない。本研究は、マラリアにおける造血系撹乱とその制御メカニズムの解明を最終目的としている。 本年度も引き続きフローサイトメトリーを用いて、マラリア原虫感染マウスの骨髄内や脾臓内での造血幹細胞や各種血球細胞の数的変動を解析した。IFN-γR1欠失マウスを利用した感染実験より、マラリア原虫感染時の樹状前駆細胞の分化にはIFN-γシグナルが重要である事が示唆された。また、γδT細胞欠損マウスを利用した感染実験により、マラリア原虫感染後の脾臓での造血細胞の増加がγδT細胞欠損マウスにおいて抑えられている事が確認され、γδ T細胞が造血に関与している事が示唆された。一方、抹消血においては、γδT細胞欠損マウスの方が多くの造血細胞がみられた事から、γδ T細胞は造血細胞の脾臓へのHomingなどに関与している事が示唆された。今後の研究によりその詳細が明らかなる事が期待できる。 また、本研究の過程において、マラリア原虫感染時にγδT細胞がCD40Lの発現とIFN-γの産生を介して、樹状細胞の活性化を促進するという新たな免疫防御機構を世界に先駆けて解明した。今後は、この成果も絡めた研究を展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は、マウスマラリアモデルを用いた研究によりマラリア原虫の感染による造血細胞(前駆細胞・幹細胞)の変動とその病態への影響と、その制御メカニズムを明らかにする事にある。 研究計画書の予定通り、本年度はγδT細胞欠損マウスを用いて、マラリア原虫感染マウスの骨髄内での造血幹細胞や各種血球細胞の数的変動をフローサイトメトリーによって解析した結果、γδT細胞と造血細胞の増加についての関連性を明らかにする事が出来た。今現在、造血細胞制御因子として、SDF-1の産生に着目し、γδT細胞との関わりを探っている。 当初の研究計画よりも、マイクロアレイ解析が進められておらず、研究目標達成のためにも、この遅れを次年度で挽回する予定である。ただし、本研究の過程で、γδ T細胞が関連する新たな免疫防御機構を世界に先駆けて明らかにする事が出来た。この防御機構と関連させて、研究をすすめる事により、マラリア原虫感染時の新たな造血制御メカニズムを明らかにする事が期待できる。 以上より総合的に自己評価すると、本研究は、研究目標の達成に向かっておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、予定の範囲内で研究を進める事が出来ているので、次年度も研究計画書通りに進めていく。 今年度に出来なかった研究を補いつつ、次年度の研究計画にのっとり研究を遂行していく。また、γδT細胞が関連するマラリア免疫防御機構を明らかにする事が出来たので、それを発展させて、γδT細胞が造血に関与する仕組みの解析をさらに行っていくことが、本研究の目的達成に重要となってくる
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次年度の研究費の使用計画 |
まず、今年度に完遂できなかった研究計画を執り行う。その際、マラリア原虫感染マウスの骨髄内で変動する造血幹細胞と正常マウスの造血幹細胞をフローサイトメトリーにより純化・採取して、「マイクロアレイ解析」により、その分子的変化を詳細に解析することを予定していたが、これまでの研究結果を考察すると、マラリア原虫感染前と後の脾臓γδT細胞のマイクロアレイ解析を執り行い、遺伝子発現の比較検討をする方が、研究目標の到達に適していると思われる。そこで、γδT細胞のマイクロアレイ解析をすすめる事とする。予算的にはほぼ変更の必要もなく、計画通りの使用用途で問題ない。また、次年度の研究計画書にのっとり研究費を使用する。
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