研究課題
近年、三日熱マラリア原虫の薬剤耐性が報告されはじめ、その対策の重要度が増している。本研究では三日熱マラリアの治療、並びに予防薬として、広く用いられているクロロキン(CQ)に対する耐性三日熱マラリアの分布状況の把握、並びにその起源と拡散様式を推定することを目的として研究を行った。三日熱マラリア原虫(Pv)のCQ耐性獲得の機序は不明な点も多いが、同原虫のpvmdr1のコドン976番目のアミノ酸置換(チロシン→フェニルアラニン)が耐性獲得に関与していると報告されている(Suwanarusk et al, 2007)。そこで平成23年度は、研究代表者の所属研究部、並びに海外協力研究者らが採取・保管していたPv 104株(西太平洋、アジア、アフリカ、南米、計21カ国)について、同コドンの変異の有無を解析した。平成24年度は、アジア諸国で拡散しはじめたCQ耐性Pvの起源と拡散様式のメカニズムを解明するために、pvmdr1近傍(~20Kb以内)のマイクロサテライト(MS)DNA 4座位を同定し、前年度に解析した104株のうち58株(CQ感受性33株、CQ耐性25株)について、MS DNA多型解析を行った。その結果、MS DNA 4座位中3座位に多型が認められたが、耐性型原虫と感受性型原虫との間にMS DNA多型のパターンに違いが観察されなかった。一方、多型が多く観察された株は、パプアニューギニアとインドの株であり、これらの国は患者数が多く、原虫集団のサイズも大きいと推定された。耐性型原虫が特定のMS DNAアリルを持っておらず、それぞれの地域の感受性型現原虫と類似していたことから、各流行地域で耐性型変異が出現している可能性が示唆された。平成24年度は、得られた研究成果を国内外の学会で発表し、現在、国際的な医学専門誌に投稿する学術論文を作成中である。
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