研究課題/領域番号 |
23790466
|
研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
奥村 香世 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (70415561)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 感染症 / 結核 / マクロファージ |
研究概要 |
PrxI(Peroxiredoxin I)は、Prxタンパクファミリーに属する酸化ストレス応答タンパク質で、哺乳動物、酵母、植物および細菌といった種々の生物が、そのホモログを有することが知られている。Prxは、過酸化水素や過酸化アルキルの分解といった活性酸素種消去系の酵素としての側面を持つ一方、細胞増殖や細胞周期、アポトーシスを制御するシグナル伝達因子としての側面も持つ多機能性のタンパクである。これまでの報告から、PrxIはToll様受容体(Toll-like receptor:TLR)のうちTLR4と結合することで、サイトカインの産生を調節するという非常に興味深い知見が得られている。しかし、この報告では部分活性化状態にある腹腔マクロファージを用いて解析を実施しており、感染時初期に重要な役割を果たす常在マクロファージでのPrxIの作用は検証されていない。また、宿主にとって主要な外的ストレスである病原細菌感染時に、宿主PrxIの発現はどのような挙動を示すのか、あるいは宿主の防御機構への関与はあるのかといった、細菌感染と宿主PrxIとの関係に関する知見はほとんど得られていない。 本研究では、結核菌がマクロファージに感染した際に発現される結核菌タンパク質と結合する宿主側分子を同定する過程でPrxIを見いだし、PrxIノックアウトマウスを用いた感染実験を実施した。その結果、ノックアウトマウスの平均生存日数は野生型マウスに比べ短く、有意な差が認められた。さらに、感染マウスから臓器(脾臓、肝臓および肺)を採取し、各臓器での生菌数を野生型マウスおよびPrxIノックアウトマウス間で比較した結果、ノックアウトマウスにおいて顕著に高いことを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、申請当初の研究計画に従い、マウスの感染実験を実施した。その結果、確定的な結論を出すために十分な量のデータが得られたことから、一定程度達成できたと評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度と同様申請当初の研究計画に従い、マウス個体を用いた感染実験の継続する。それ以外にも、培養細胞およびマウスから採取した骨髄細胞由来マクロファージを使用した感染実験を実施する。これらの実験から得られた知見を元に、宿主細胞の結核菌感染に対する防御機構や宿主細胞内での結核菌の挙動を詳細に検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に従い、主として遺伝子解析用試薬、タンパクアッセイ用試薬および細胞培養用試薬をはじめとする消耗品の購入に使用する。また、次年度は本研究の最終年度であることから、成果発表のための学会出席、あるいは研究協力者との研究打ち合わせのための国内出張を積極的に行い、細菌感染症研究の動向に関する情報収集や研究協力者との綿密な情報共有を実施する。
|