PrxI(Peroxiredoxin I)は、Prxタンパクファミリーに属する酸化ストレス応答タンパク質で、哺乳動物、酵母、植物および細菌といった種々の生物が、そのホモログを有することが知られている。Prxは、過酸化水素や過酸化アルキルの分解といった活性酸素種消去系の酵素としての側面を持つ一方、細胞増殖や細胞周期、アポトーシスを制御するシグナル伝達因子としての側面も持つ多機能性のタ ンパクである。これまでの報告から、PrxIはToll様受容体(Toll-like receptor:TLR)のうちTLR4と結合することで、サイトカインの産生を調節するという非常に興味深い知見が得られている。しかし、この報告では部分活性化状態にある腹腔マクロファージを用いて解析を実施しており、感染時初期に重要な役割を果たす常在マクロファージでのPrxIの作用は検証されていない。また、宿主にとって 主要な外的ストレスである病原細菌感染時に、宿主PrxIの発現はどのような挙動を示すのか、あるいは宿主の防御機構への関与はあるのかといった、細菌感染と宿主PrxIとの関係に関する知見はほとんど得られていない。 本研究では、結核菌が感染した際に重要な働きを示すことが予想される宿主側分子PrxIを見いだし、PrxIノックアウトマウスを用いた感染実験を実施した。その結果、ノックアウトマウスの平均生存日数は野生型マウスに比べ短く、有意な差が認められた。また、宿主PrxIタンパクが結核菌をはじめとする抗酸菌特異的なタンパクと結合することを明らかにした。
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