研究課題/領域番号 |
23790467
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
浅野 クリスナ 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70598622)
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 |
研究概要 |
H23年度に得られた、TSST-1がホストのオートファゴゾームの形成を抑制するという結果から、H24年度は黄色ブドウ球菌の野生型(WT)及びTSST-1欠損型(Δtst)のホスト細胞(HeLa 229)内での動態について研究を行った。 ・スーパー抗原活性欠損型TSST-1(mTSST-1)でもオートファゴゾーム形成の抑制が確認された。TSST-1の関わるオートファゴゾーム形成にスーパー抗原活性が関与しないことが明らかになった。 ・透過型電子顕微鏡により各菌の細胞内局在を検索した結果、WTは空胞状構造に分布するのに対し、Δtstはサイトゾルに分布することが分かった。更に、黄色ブドウ球菌株それぞれのYFP発現株(YFP-WT及びYFP-Δtst)、及びエンドゾームマーカー(EEA1)、リソソームマーカー(LAMP1)、オートファゴゾームマーカー(LC3)を用いて、WTが局在する空胞状構造のキャラクタリゼーションを行ったところ、WTはエンドゾームに局在することが明らかになった。 ・TSST-1によるオートファジー修飾の分子機構を明らかにするため、rTSST-1が結合するHeLa 229のタンパク質を二次元電気泳動で決定し、LC-MS/MSにより解析したところ、septin 7とT-complex protein 1が明らかになった。これらはそれぞれオートファゴゾーム形成に関与するタンパク質であるため、TSST-1によるオートファジー修飾機構に関わっていることが強く示唆された。これらの結果については現在論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の結果を踏まえ、平成24年度の計画に沿って黄色ブドウ球菌の細胞内動態およびオートファジー修飾におけるTSST-1の機能に注目して研究を行った。この結果、菌はTSST-1依存的にエンドゾームに局在すること、TSST-1がオートファジー関連タンパク質に結合することが明らかになった。研究は、ほぼ計画通りに遂行されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、科学研究費申請時の目的、計画に沿って研究を進める。平成25年度は、これまで明らかになったTSST-1依存的な黄色ブドウ球菌細胞内局在の意義について研究を進める。具体的にはホスト細胞に対するWT及びΔtstの感染の際の培養条件検討、及び、マウスモデルにおけるWT及びΔtst感染の、生存率の解析、臓器内菌数の解析、病理学的解析を行う。また、TSST-1に結合するタンパク質について機能を検証した後、オートファジー修飾に至る分子機構を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、ホスト細胞に対するWT及びΔtstの感染の培養条件検討の実験が先送りとなった等の理由で、繰り越しの研究費が発生した。平成25年度は、上記実験の為にこれを活用し、前年度に得られた成果の検証を行いながら、以下の用途に研究費を活用する。 1. 培養細胞の維持及び実験に用いる試薬と消耗品。 2. 細菌の培養、感染実験に用いる試薬と消耗品。 3. オートファゴゾーム形成のInducers及びinhibitor。 4. オートファゴゾーム形成に関わる分子に対する抗体。 5. オートファゴゾーム形成に関わる遺伝子の解析に用いる試薬と消耗品。 6. マウスの購入と飼育、病理学的解析に用いる器具と試薬。
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