[1]. オートファジー抑制におけるTSST-1メカニズムについての研究を継続した。HeLa細胞において、TCP-1およびSeptin7 (平成24年度にTSST-1結合タンパク質として同定)の産生をsiRNAで抑制した場合、LC3IIの発現量が亢進した。この結果により、TCP-1およびSeptin7はオートファジー調節メカニズムに関わり、TSST-1への結合はこのメカニズムの修飾につながることが示唆された。[2]. オートファジー抑制および菌の宿主内在化におけるTSST-1の効果を明らかにするため、TSST-1欠損株(Δtst)のTSST-1強制発現によるTSST-1相補株(Δtst / tst)を初めて作製した。この菌株をマウスに感染させたところ、Δtstに比べ宿主致死率の増加が示唆され、TSST-1が病原性に強く関わることを確認した。しかし、この菌株は野生型やΔtstでみられるブドウ状クラスターを形成せず、菌数の比較に問題が生じた。今後TSST-1の機能を更に明らかにするため、菌数計測条件の改善を図る予定である。[3]. 非病原性黄色ブドウ球菌株S. aureus RN4220にTSST-1を過剰発現させ、菌株(RN/tst)を確立した。RN4220とRN/tstをHeLa229に感染させたところ、RN/tstの細胞内菌数がより少ないことが分かった。この効果とオートファジー抑制との関連については現在検討中である。また、RN4220とRN/tstをそれぞれマウスに感染させた結果、RN/tstで致死率の著明な増加を確認した。今後RN/tst感染時の致死がオートファジー抑制と菌の感染促進によるものかについて検証する。また、スーパー抗原活性欠損TSST-1、およびその菌株を作製し、TSST-1と感染メカニズムについて更に研究を進める予定である。
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