研究課題
サルモネラや大腸菌O-157による感染症は3型分泌装置と呼ばれるナノサイズの注射器によってエフェクタータンパク質が宿主細胞に注入されることから始まる.多くの病原菌の感染機構を解き明かす鍵はエフェクターの毒性発揮機構とエフェクターの分泌機構の解明だといわれている.これまでに分子生物学的な観点からサルモネラのエフェクター分泌機構が検討されてきた.申請者は定量的情報の取得が大切であり,将来的には試験管内再構成を念頭に置いたタンパク質の大量調製と試験管内再構成に基づくエフェクター分泌機構の解明に焦点を当ててきた.3年目は,この2年間で有益な結果を蓄積できた,エフェクターSptPとSptP特異的シャペロンSicPとの相互作用について,再試と論文化に注力した.Spt1-158とSicPとの相互作用を試験管内で評価するためにはそれぞれを別々に調製する必要がある.しかし,SptP1-158は疎水性が強く本来の構造を保ったタンパク質として調製できなかった.そこで,新しい試みとして尿素下で変性状態として精製した.変性状態で調製したSptP1-158と天然状態で調製したSicPをある割合で混合し,複合体形成を確認した.さらに,C末端切断型SptPを複数種調製し,真にSptP/SicP複合体形成に必要な領域は106-136残基であること,89-105残基は複合体形成に必須ではないが,SicPと相互作用して水溶性の構造に変換する可能性が高いことを明らかにした.また,複数の変異型SicPを作製し,同法でSptP1-136との再構成を検討したところ,再構成に影響を与える特定の残基を1つ発見した.X線結晶構造解析に基づくSptP/SicP複合体の構造から,SptPのN末端がSicPを取り囲むように複合体を形成すると思われてきたが,溶液中では非常に限られた領域で複合体を形成する可能性を示した.
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
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