研究概要 |
皮膚カンジダ症は糖尿病、HIV感染症、免疫抑制剤使用時などにおける免疫力低下の重要な指標となる。皮膚カンジダ症に対する宿主の免疫反応において、局所に浸潤する白血球によって産生されるサイトカインが重要な役割を果たすことが知られているものの、白血球が皮膚カンジダ症の組織に浸潤する分子メカニズムについては明らかではない。そこで白血球の血管外浸潤を担う主要な細胞接着分子であるE-selectin, P-selectin,およびP-selectin glycoprotein ligand (PSGL)-1の皮膚カンジダ症における役割について、各細胞接着分子欠損マウスを用いた皮膚カンジダ症モデルにおいて解析した。Candida albicansの仮性菌糸5,000,000 cellsを様々な系統のマウスの背部に皮下注射して、その臨床経過を評価した。E-selectin欠損マウスは、P-selectin欠損アウス、PSGL-1欠損マウス、および野生型マウスに比べて皮膚カンジダ症の治癒が統計学的に有意に遅延した。皮下注射35日後にはP-selectin欠損マウス、PSGL-1欠損マウス、および野生型マウスではほぼすべてが皮膚カンジダ症は治癒していた。その一方でE-selectin欠損マウスでは皮下注射35日後の皮膚カンジダ症治癒率は約45%だった。また、Candida albicans皮下注射後の背部の皮下結節におけるCandida albicansの菌量を比較したが、マウスの系統による差はなかった。以上のことからE-selectinがマウスの皮膚カンジダ症の治癒過程および白血球の血管外浸潤において、重要な役割を果たしていることが示唆される。
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