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2011 年度 実施状況報告書

ボツリヌス毒素伝達機構の解明に向けたファージゲノムの解析

研究課題

研究課題/領域番号 23790479
研究機関宮崎大学

研究代表者

阪口 義彦  宮崎大学, IR推進機構, 助教 (70403491)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードボツリヌス菌 / ボツリヌス毒素遺伝子 / バクテリオファージ / プラスミド / ファージ変換 / 接合伝達 / チューブリン / 分配
研究概要

ボツリヌス菌は強力なボツリヌス毒素を産生し、ヒトや家畜に強力な致死作用を示す。本菌はその毒素の抗原性の違いにより、A~G型に分類される。これらの中で、C型とD型菌のみ宿主特異性バクテリオファージにより、ボツリヌス毒素の産生性が支配されている。以前に、C型有毒株から単離した毒素変換ファージ(c-stファージ)の全塩基配列を決定し、様々な特徴を明らかとした。今回、以下の2つの研究を行った。1)c-stファージゲノム上には、プラスミド分配に関与するタンパク質であるチューブリン/FtsZ様タンパク質(TubZ), TubR, TubS, TubYをコードする遺伝子が存在することから、それぞれの遺伝子を組換えタンパク質として発現・精製した。種々のタンパク質の機能解析を行ったところ、TubY がTubZ-R-S複合体に相互作用し、プラスミド分配を引き起こしていることが明らかとなった(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, In Press)。2)C型とD型毒素変換ファージゲノム構造をc-stファージと比較するため、ファージゲノム全体のPCRスキャニング解析を行ったところ、全体的には非常にバリエーションがあったことから、それぞれのファージ間でゲノム構造が異なっていることが推察された。そこで、C型毒素変換ファージ(c-468ファージ)の全ゲノム塩基配列の決定を進め、c-468ファージゲノム全体の約90%に相当する領域の配列決定が終了した。現在、残りのギャップについて配列決定を進めている。 ボツリヌス毒素遺伝子を伝達するファージにおいては、1種類のゲノム(c-stファージ)情報のみである。C型とD型毒素変換ファージゲノムの配列決定を行い、ゲノム構造を比較しファージゲノムの多様性を解析する。本解析から、毒素遺伝子の伝達機構(ファージ変換)の解明に前進したいと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

既に、当研究室では二種病原体を取り扱う機器が備わっていたこと、取扱施設の承認を得ていたことから、即座に計画通りの実験を始めることができた。また、大学内のフロンティアや人獣共通感染症プロジェクトの支援(連携)を受け、研究のサポート体制が非常に整っていたことから、効率よく実験が進められた。従って、進捗状況は良好である。1)ファージのプラスミド分配に関与するタンパク質の機能解析 c-stファージゲノム上のTubZ, TubR, TubS, TubYをコードする遺伝子のクローニングすることが困難であった。それぞれの遺伝子をT7プロモーターを有するベクターに構築し、大腸菌にトランスフォームしたが、液体培地では菌の増殖が認められなかった。そこで、遺伝子の発現を抑制するプロモーターを有するベクターに構築したところ、菌の増殖が改善されそれぞれのプラスミドを抽出・精製することができた。遺伝子のクローニングには時間を要したが、本タンパク質の機能解析を順調に進めることができたことから、論文執筆ができProc. Natl. Acad. Sci. USAにアクセプトされた。2)c-468ファージの全ゲノム塩基配列の決定 本ファージゲノムは、継代培養を繰り返すとゲノム構造が変化すること、多数の繰り返し配列が存在することから、配列決定が非常に困難と考えていた。しかし、これまでの研究より様々な問題点を解決するノウハウを身につけていたことから、配列決定に大きな支障は生じなかった。

今後の研究の推進方策

<C型毒素変換ファージの全塩基配列の決定> C型毒素変換ファージ, c-468ファージゲノムの残りのギャップ領域については、インバースPCRとプライマーウォーキング法により配列決定を行う。<D型毒素変換ファージの全塩基配列の決定> D型毒素変換ファージ, d-1873の全ゲノム塩基配列の決定については、次世代シーケンサー(イルミナ, Myseq)を用いて配列決定を行う。繰り返し配列が多い場合、配列決定が困難となることが予想されるので、次世代シーケンサー(Roche, 454 FLX Titanium)を用いる。<ファージゲノム上の配列の相同性検索> ゲノムDNA上のそれぞれのPotential protein-coding regions(ORF) を確定する。得られたORFと種々の生物における既知の遺伝子との核酸・アミノ酸配列の相同性を調べる。具体的には、分子生物学・配列解析ソフトウェア(インシリコモレキュラークローニング)を用いて、塩基配列および予測アミノ酸配列を種々のプログラム(BLASTN, BLASTPなど)により、公共のデータベース(DDBJ)に対して配列の相同検索およびモチーフ検索を行う。特に、毒素の伝達および挿入配列に関わる遺伝子を解析する。

次年度の研究費の使用計画

前年度では、PCRサーマルサイクラーが不足していたので、効率よくショットガンライブラリーのシーケンス解析を進めることができなかった。そのため、ファージゲノムの全塩基配列の決定に時間を要した。今年度は、応募申請書に記載した購入計画を変更し、PCRサーマルサイクラーの購入を考えている。<C型毒素変換ファージの全塩基配列の決定> C型毒素変換ファージゲノムのギャップ領域の配列決定には、PCR試薬、DNAシーケンス試薬、DNAシーケンス受託、プライマー合成、プラスティック器具などが必要である。<D型毒素変換ファージの全塩基配列の決定> 配列決定には、受託により次世代シーケンサーを用いて解析を進める。本解析には、サンプルの前処理試薬、消耗品などを必要とする。解析後のギャップ領域については、C型毒素変換ファージの配列決定と同様に行う。C型とD型毒素変換ファージのゲノム解析を行い、論文執筆し投稿する。その際、英文校正費および出版費が必要となる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Tubulin homolog TubZ in a phage-encoded partition system2012

    • 著者名/発表者名
      Oliva, MA., Martin-Galiano, AJ., Sakaguchi, Y., Andreu, JM.
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. USA

      巻: In Press ページ: In Press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TIRAP, an adaptor protein for TLR2/4, transduces a signal from RAGE phosphorylated upon ligand binding2011

    • 著者名/発表者名
      Sakaguchi, M., Murata, H., Yamamoto, K., Ono, T., Sakaguchi, Y., Motoyama, A., Hibino, T., Kataoka, K., Huh, NH.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 6(8) ページ: e23132

    • 査読あり
  • [図書] 医薬ジャーナル社「病原菌の今日的意味 改訂4版」2011

    • 著者名/発表者名
      小熊惠二, 阪口義彦, 西河 淳
    • 総ページ数
      259-288
    • 出版者
      ボツリヌス菌 (Clostridium botulinum)
  • [備考]

    • URL

      http://www.miyazaki-u.ac.jp/ir/

URL: 

公開日: 2013-07-10  

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