研究課題
Escherichia albertii は、近年、大腸菌の近縁種として新たに命名された新菌種で、腸管出血性大腸菌や腸管病原性大腸菌と同様に、LEE と呼ばれる領域にコードされるIII 型分泌系を有することが明らかになっている。しかし、ヒト病原菌としての位置づけは十分になされておらず、基本的な生化学的性状なども未だ不明な点が多く、有用な疫学マーカーも存在しない。本研究では、動物及びヒト下痢患者から大腸菌として分離された株の中から26 株のE. albertii を同定し、その遺伝学的・生化学的性状を明らかにした。同定したE. albertii 26 株のうち、進化系統が離れた4 株について、新型シークエンサーRoche454 によるドラフトゲノム配列取得、PCR とその産物のシークエンシング、Fosmid ライブラリーのシークエンシングを行って、4 株全ての全ゲノム配列を決定し、遺伝子アノテーションも完了した。また、全ゲノム配列が明らかとなっている大腸菌を含む近縁種とのゲノム比較を行い、本菌の種特異的遺伝子群や病原関連遺伝子群を数多く同定した(論文投稿準備中)。また、疫学マーカー開発のための予備的な解析として、ゲノム解析株4 株の特異的配列を標的としたPCR 検出系を試験的に構築し、国内で腸管病原性大腸菌による下痢症集団感染として報告されていた事例を再検証した結果、E. albertii に起因する集団感染を2 事例同定した。今後は、本研究で同定した病原関連遺伝子群について個別解析を行うことにより本菌の病原機構を明らかにするとともに、種特異的代謝系遺伝子群を利用した選択培地の開発を進める予定である。
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