研究課題
Vibrio alginolyticusのコラゲナーゼ産生を調べたところ、培地に加えたゼラチン(コラーゲンの熱変性物)の濃度依存的にコラゲナーゼを産生した。このことは本菌がコラーゲンの存在を感知する機構(コラーゲン・センサー)を持っていることを示唆している。そこで新規マトリックス・アンカーの探索のために、本菌のコラゲナーゼ発現調節に関る遺伝子の探索を行った。トランスポゾンを用いて染色体上の遺伝子を無作為に破壊し、コラゲナーゼ産生能を欠損した変異株を分離した。分離した変異株では二成分制御系のセンサー・キナーゼ遺伝子(varS)にトランスポゾンが挿入されていた。そこで野生株の染色体DNA上のvarSを欠失させた変異株を構築したところ、コラゲナーゼを産生しなかった。次に染色体DNA配列を探索した結果、VarSと二成分制御系を構成することが予想されたレスポンス・レギュレーター(VarA)が推定された。そこで同様に野生株のvarAを欠失させた変異株を構築したところ、varA欠失変異株もコラゲナーゼを産生しなかった。二成分制御系はセンサー・キナーゼとレスポンス・レギュレーターがリン酸基の転移を介してシグナルの伝達を行う系である。そこでVarSとVarAもリン酸基の転移を介したシグナル伝達を行っているかを、in vitroリン酸化実験により調べた。その結果、VarSからVarAへのリン酸基の転移が観察された。このことから、両タンパク質がリン酸基の転移を介したシグナル伝達を行っていることが明らかとなった。以上の結果からVarS/VarA二成分制御系がV. alginolyticusのコラゲナーゼ産生を制御していることが明らかとなった。VarS/VarAによるシグナル伝達を阻害する薬物は、毒素産生阻害剤といった全く新しいタイプのビブリオ感染症治療薬となることが期待される。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) 備考 (1件)
Journal of biomedical materials research Part A
巻: 102 ページ: 1737-1743
10.1002/jbm.a.34841
http://www.okayama-u.ac.jp/user/saikin/