①AsnH酵素活性と自然免疫賦活化作用との関連の解明 大腸菌にて大量発現したAsnHタンパク質について、Amplex Red glutamic Acid/Glutamate Oxidase assay kitを用いてAsnH酵素活性を算出した。乳酸桿菌細胞壁抽出物を基質として用いた際、asnH遺伝子を有し自然免疫賦活化作用を示す菌株のみ活性は認められた。一方、アスパラギン酸を基質として用いた際にはすべてにおいて活性は認められなかった。すなわち、AsnH酵素活性と自然免疫賦活化作用との関連が示唆され、かつAsnHは細胞壁構造形成に関与することが推察された。 ②乳酸桿菌の菌体表層構造と自然免疫賦活化作用との関連の解明 定常期の菌体を走査型(SEM)および透過型(TEM)電子顕微鏡により観察、比較したところ、SEM撮影像ではasnH遺伝子を有する菌株において表層構造は多数の突起のようなものに覆われているのに対し、変異株ではこれらの突起は認められなかった。TEM撮影像ではasnH遺伝子を有する菌株においてペプチドグリカン層および表層多糖層が明瞭に認められたが、変異株ではペプチドグリカン層、表層多糖層ともに明瞭には認められず、ペプチドグリカン層においては有意に薄いことが明らかになった。また、asnH変異株ではJ1ファージであるレセプターである菌体表層多糖D-ガラクトサミンが欠失している。そこで、野生株およびasnH変異株の菌体表層成分をゲル濾過クロマトグラフィにより比較したところ、asnH変異株では多糖-ペプチドグリカン複合体(PS-PG)の一部に欠失が認められた。 以上のことから、asnH変異株ではペプチドグリカンだけでなく表層多糖構造も欠失していることが示唆され、欠失が認められたPS-PGがL. casei ATCC 27139の自然免疫賦活化に関与する構造であると考えられた。
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