研究課題/領域番号 |
23790487
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
内山 良介 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (20456891)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / I型インターフェロン / 辺縁帯B細胞 / 莢膜 |
研究概要 |
肺炎の発症要因の中でも、特に肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染症は頻度が高く、さらに本菌は、感染した粘膜などから血中に移行し、敗血症や髄膜炎など重症型の感染症を発症することが多いため、臨床上その感染制御が重要である。 肺炎球菌の表層は多糖成分で構成された莢膜構造で覆われており、これが主要な病原因子となっている。そのため、莢膜抗原に対する抗体は感染防御にきわめて有効である。莢膜抗原に対する抗体は、主に、脾臓の辺縁帯と呼ばれる領域に存在するB細胞群(辺縁帯B細胞, Marginal Zone B cells:MZ B細胞)が産生することが知られている。本研究により、精製莢膜多糖成分ワクチンであるPPV23接種マウスにI型インターフェロン(I型IFN)を投与すると、脾細胞からのIgM抗体産生量が有為に上昇することを見出した。 そこで、抗PPV23抗体産生に内因性I型IFNはどのように関与しているのか検討を行った。まず、野生型およびI型IFN受容体(Ifnαr1)欠損マウスでMZ B細胞の数に差があるのか検討を行ったところ、野生型および欠損マウスで大きな差は認められなかった。PPV23ワクチン接種マウスでは、野生型および欠損マウスいずれにおいてもMZ B細胞数の増加が認められたが、両者間での差は認められず、さらに血清中IgM抗体価にも有為差は認められなかった。さらに、PPV23接種後のマウス脾臓におけるIfnβ遺伝子発現をリアルタイムPCRで解析したところ、遺伝子発現の有為な上昇は認められなかった。以上の結果から、PPV23ワクチン接種によるIgM抗体産生に対しては、内因性I型IFNは必須の因子ではなく、その効果を増強するものであることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究により、MZ B細胞をcell sortingにより分取し、in vitro培養実験系および抗体産生の評価系を確立した。この実験系を用いて、PPV23接種マウスより採取したMZ B細胞により、抗莢膜抗体の産生を認めた。また、肺炎球菌の感染によるIgM抗体産生の実験系を確立した。今後、この実験系を用いて、肺炎球菌感染による抗体産生において必要な宿主側の因子にせまることができる。また、MZ B細胞数の変動を評価する実験系を作成した。 以上のように、研究を遂行する上で必要な評価系を作成し、それを用いて結果を得る事ができており、研究はおおむね順調に遂行されていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究によって確立した評価系などを用いて、さらに研究を推進させていく予定である。具体的には、肺炎球菌の感染による抗莢膜多糖抗体の産生機序について、I型インターフェロンの寄与を明らかにしていく。この際、種々の遺伝子ノックアウトマウスを用いて、その機序について明らかにしていく予定である。また、I型インターフェロンの作用機序を分子レベルで明らかにしていくため、確立した細胞分取法により、I型インターフェロンの標的細胞などを同定していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度予算から20万円程度の次年度使用が生じた。これは、当初予定よりも出張旅費が抑えられたことと、消耗品費の節約に努めた結果である。この予算を平成24年度の消耗品費などにあて、さらに研究を推進させたいと考えている。
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