肺炎は本邦における死亡原因の第4位を占め、その死亡者は毎年10万人にものぼり、社会的にその制御が重要な疾患である。肺炎の発症要因の中でも、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染症は重要な原因の一つである。肺炎球菌の表層は多糖成分で構成された莢膜構造で覆われており、これが主要な病原因子となっている。すなわち、莢膜多糖が表面を覆っているため、菌体表面における補体活性化が阻害され、マクロファージなどからの貪食に抵抗性を示し、生体防御系を回避する。この莢膜抗原に対する抗体は、菌のオプソニン化を促進して補体系の活性化を誘導する。その結果、マクロファージの貪食を活性化することで、菌の排除を促進するため、莢膜に対する抗体は感染防御に有効である。 I型インターフェロン(I型IFN)は、ウイルス感染防御に重要なサイトカインであり、C型肝炎ウイルス感染症に対する治療において臨床応用されている。一方、細菌感染防御におけるI型IFNの役割についても研究が行われつつある。我々はこれまでの研究で、肺炎球菌の莢膜抗原ワクチン(PPV23)接種マウスにIFN-βを投与すると、脾細胞からの莢膜抗原特異的なIgM抗体産生量が上昇することを見出した。そこで、マウスより調整した脾細胞をin vitroで培養し、抗体産生細胞である辺縁帯B細胞の細胞数変化を観察した。その結果、IFN-β非存在下では、その細胞数が経時的に減少するのに対し、IFN-β存在下ではその減少が抑制された。この減少抑制作用はI型IFN受容体欠損マウス由来細胞では認められなかったことから、I型IFNの効果によることが確認された。さらに、セルソーターにより分離した辺縁帯B細胞においても、同様に細胞数減少の抑制が認められたことから、I型IFNが辺縁帯B細胞に直接作用し、細胞数減少を抑制している可能性が示唆された。
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