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2011 年度 実施状況報告書

マイコプラズマによる新しい炎症誘導機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23790488
研究機関山口大学

研究代表者

清水 隆  山口大学, 農学部, 准教授 (40320155)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードマイコプラズマ肺炎 / マイコプラズマ / Toll-like receptor / 自然免疫 / リポプロテイン / 肺炎
研究概要

Mycoplasma pneumoniaeは人に肺炎を惹起する細菌であり、これまでの我々の研究よりM. pneumoniaeのリポプロテインがToll-like receptor 2 (TLR2)を介して肺において炎症を誘導することが明らかとなった。しかしながら、本研究においてTLR2 KOマウスにおいても炎症が惹起されることを見出したため、詳細な解析を行った。TLR2 KOマウスの腹腔マクロファージにM. pneumoniaeを感染させた所、WTマウスと同様に炎症性サイトカインのTNF-alphaの誘導が観察された。生菌の感染では顕著な炎症性サイトカインの産生がみられたが、熱処理や音波処理で不活化した菌体では炎症性サイトカインの誘導はみられなかった。TLR4 KOマウスにおいて炎症性サイトカインの誘導が部分的に減弱された。またTLRのアダプタータンパク質であるMyD88 KOマウスにおいては炎症性サイトカインの誘導が見られなかった。TLR2とTLR4のダブルKOマウスにおいても炎症性サイトカインの誘導は部分的に減弱され、完全には抑制されなかった。以上のことからM. pneumoniaeの炎症誘導には、1. TLR2非依存的な炎症誘導が存在する、2. TLR4依存的な炎症誘導機構が存在する、3. TLR4非依存的かつMyD88依存的な炎症誘導が存在する、4. それらの炎症誘導にはM. pneumoniaeの何らかの生体反応が必須であることが明らかとなった。この未知の炎症誘導機構の分子メカニズムを解明するため、トランスポゾンを用いてM. pneumoniaeの変異体を作製し、TLR2 KOマウスにおいて炎症を誘導できない変異株をスクリーニングした。2000株の変異体の中から2株の変異体が得られた。この変異体の解析は次年度以降に行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

23年度の研究計画ではTLR2非依存的炎症誘導の宿主側のメカニズムを解明するために、カルシウムによる情報伝達、MAP kinaseの関与を検討する予定であった。しかしながら、これらのシグナル伝達経路について解析を行った結果、明確な成果は得られなかった。そのため、24年度の研究計画であったTLRに関する検討を行った。KOマウスを用いた解析の結果、TLR4、MyD88の関与が明らかとなった。また、23年度の研究計画ではTLR2非依存的炎症誘導の菌側のメカニズムを検討するために、トランスポゾンによりTLR2 KOマウスに炎症を惹起できない変異体を取得する計画であった。計画に従い2000株の変異体からTLR2 KOマウスに炎症を誘導しない変異株を2株取得した。現在、変異挿入部位を特定中である。また、さらなる変異株の取得を目指して、スクリーニングを再度行う予定である。

今後の研究の推進方策

TLR2非依存的な炎症誘導を惹起するM. pneumoniaeの因子および、宿主側の因子を引き続き解析する。M. pneumoniaeの因子の解析において、現在トランスポゾンによる変異体を2株得ている。さらに数を増やすためにスクリーニングを、方法を一部変更した上で、再実施する予定である。方法は研究計画に従うが、複数の変異株の同時混入を防ぐため、遺伝子導入株をフィルターで処理し、菌塊を除いた後に培養する。既得変異株の変異部位の同定は研究計画に従い現在進行中である。宿主側の因子の解析は、TLR以外のレセプターやシグナル伝達機構の解析を引き続き行う予定である。Inflammasomeをはじめとした様々なレセプターのsiRNAを利用し、その関与を検討する。対象遺伝子として、細胞内受容体に関与するNLRファミリーのNaip1-7, Nod1-2, Nlrc3-5, Nlrp1-14、ペプチドグリカンの受容体として知られるPGRP、C-typeレクチンやインテグリンによって活性化されるSYK tyrosine kinase等を予定している。また、変異株の解析から予想される宿主側の因子も同様に検討する予定である。また研究計画にはない新たな計画として、TLR2 KOマウスとWTのマクロファージにおけるM. pneumoniaeの取り込み、細胞内侵入、細胞内消化などをGFP発現M. pneumoniaeを用いて比較する予定である。

次年度の研究費の使用計画

1. トランスポゾンよる変異株のさらなる取得と、その変異挿入部位の解析を行う。そのための遺伝子取り扱い試薬、培地、ELISAキット等の消耗品を購入予定である。2. 宿主側の因子をsiRNAを用いて検討する。そのためのsiRNA、遺伝子導入試薬を購入予定である。3. TLR2 KOマウスとWTのマクロファージにおけるM. pneumoniaeの取り込み、細胞内侵入、細胞内消化などをGFP発現M. pneumoniaeを用いて比較する。この計画のため、顕微鏡関連試薬、抗体などの消耗品を購入予定である。4. 昨年度の結果を国際マイコプラズマ学会で発表するための旅費を申請予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [学会発表] マイコプラズマの炎症誘導因子2012

    • 著者名/発表者名
      清水 隆
    • 学会等名
      日本細菌学会総会
    • 発表場所
      長崎ブリックホール
    • 年月日
      2012月3月27-29日
  • [学会発表] 接着に依存的なマイコプラズマの炎症2011

    • 著者名/発表者名
      Takashi Shimizu
    • 学会等名
      IUMS
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2011年9月6-10日
  • [学会発表] 接着に依存的なマイコプラズマの炎症2011

    • 著者名/発表者名
      Takashi Shimizu
    • 学会等名
      アジアマイコプラズマ学会
    • 発表場所
      長崎県医師会館
    • 年月日
      2011年10月19-21日
  • [図書] 松本慶蔵編 病原菌の今日的意味 37章マイコプラズマ2011

    • 著者名/発表者名
      清水 隆
    • 総ページ数
      11
    • 出版者
      医薬ジャーナル

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公開日: 2013-07-10  

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