Mycoplasma pneumoniaeはヒトに肺炎を起こす細菌で、これまでM. pneumoniaeのもつリポプロテインがToll-like receptor (TLR) 2を介して炎症を誘導すると考えられてきた。昨年度までに我々はTLR2KOマウスにおいてもM. pneumoniaeによる炎症誘導が惹起されることからTLR2非依存的な炎症誘導経路が存在することを明らかにしてきた。そのTLR2非依存的な炎症誘導経路にはM. pneumoniaeの何らかの生体反応および宿主のTLR4が関与していることがこれまでの研究の成果とせて明らかとなっていた。 本年度の研究ではあらたにオートファジーが関与していることが明らかとなった。オートファジーの形成阻害剤である3-MAを処理したTLR2 KOマクロファージでは生菌のM. pneumoniae感染において炎症性サイトカインの誘導が阻害された。またはオートファジーとリソソームの融合阻害剤であるchloroquineの処理によっても炎症性サイトカインの誘導は阻害された。さらに共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察により、マクロファージに感染したM. pneumoniaeは細胞内でオートファジーと共局在することが明らかとなった。これらのことからTLR2非依存的炎症誘導にはオートファジーにより、M. pneumoniaeが分解されることが必須であることが示唆された。さらにTLR2非依存的炎症誘導に重要な菌側の因子を同定するために、M. pneumoniaeの変異株をトランスポゾンを用い作製し、TLR2 KOマクロファージにおいて炎症誘導能が減弱する株をスクリーニングした。その結果ATP synthase F0F1 subunit εであるatpCとhypothetical proteinのMPN333に変異が挿入されていることがあきらかとなった。双方の変異株では細胞接着性を欠いていることが明らかとなった。 以上の結果からM. pneumoniaeの接着がTLR4及経由でオートファジーを誘導し、炎症を誘導していると考えられた。
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