研究課題
結核菌は世界の人口の1/3に感染し、感染者の10%が生涯のいずれかの時期に発症する。日本の年間罹患者は約2万人であり半数は70歳以上の高齢者の再燃による。数十年にわたり休眠状態で潜在感染した菌は、高齢化等に伴い増殖を再開し結核を発症する。既存の抗結核薬の効かない休眠菌を殺菌することは、結核再燃対策および結核の抗結核薬による治療の短期化に重要であるが、休眠誘導、休眠の維持、再増殖に到る機構の詳細は不明である。1955年に分離されたストレプトマイシン(SM) 要求性のMycobacterium tuberculosis 18b株は、16S rRNAに1塩基挿入変異があり、SM存在下で増殖し、SM非存在下では数回の分裂の後増殖を停止する。SMの添加により増殖を再開することから、休眠現象のモデルとして利用されつつあり、近年休眠期にも殺菌作用を示す新規薬剤のスクリーニングに用いられている。しかし結核菌の培養に必要なBSL3実験室を有する施設は限られることから、BSL2実験室で取り扱い可能な結核菌のワクチン株であるM. bovis BCGに結核菌18b株と同一の挿入変異を導入し、SM要求性となるか解析した。挿入変異のあるBCG株は、SM濃度依存的に増殖し、SMを除くと約7日で増殖を停止したことから、結核菌18b株と同様にSM要求性となることを示した。また結核菌18b株のSM要求性の原因遺伝子が、16S rRNAへの一塩基挿入であることが示された。SM除去による増殖停止後2週間のコロニー形成率は10%、3週間で1%に低下したが、SM添加により増殖を再開したことから、SM要求性BCG株を用いて抗結核薬感受性を比較し、結核菌18b株と同様に休眠期に有効な新規薬剤スクリーニングに利用可能か解析を行った。
すべて 2015
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Protein Expression and Purification
巻: 112 ページ: 37-42
10.1016/j.pep.2015.04.010