研究課題/領域番号 |
23790491
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
赤間 剛 独立行政法人国立成育医療研究センター, 薬剤治療研究部, 共同研究員 (20575253)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | らい菌 / ハンセン病 / THP-1細胞 / HSL |
研究概要 |
ハンセン病の起因菌であるらい菌は、ヒトに感染後マクロファージなどの宿主細胞に取り込まれ、細胞内で生存し増殖することができる。このらい菌による感染、生存維持、増殖、免疫寛容の成立によって、その後のハンセン病発症に至るが、これらの機構の解明には、らい菌が試験管培養できないことが障害となってきた。しかしヌードマウスにらい菌を感染、増殖させた後に分離し、分子細胞生物学的解析に供することで宿主の免疫応答機構を解析することが可能になった。本研究では宿主細胞としてヒト単球由来THP-1細胞を用い、らい菌感染に応答した遺伝子発現や細胞内シグナルを解析し、らい菌が細胞内寄生や免疫寛容を成立させる分子機構を明らかにする。まず効率的ならい菌のTHP-1細胞内取り込み条件の検討を行った。THP-1細胞は異物に接触するとファゴサイトーシスによって細胞内への取り込みを行うが、増殖培養条件では密度の点で接触と取り込みの効率が低い。らい菌の代わりに蛍光標識ビーズを用いて取り込み条件の検討を行った結果、遠心して細胞ペレットを調製後、微量の高密度ビーズ溶液と混合し、短時間インキュベーションすることで、高効率の取り込みが可能となった。らい菌を用いた取り込みを検証後、感染細胞の洗浄条件も検討し、THP-1細胞にらい菌を効率よく感染させサンプル調製を行うモデル系を確立した。この系を用いてRNAを抽出し、マイクロアレイに供して遺伝子発現解析を行ったところ、コントロールサンプルと比較して発現が変動する遺伝子を多数同定した。これらの遺伝子の中にはサイトカインとその受容体など免疫応答に関与する遺伝子も多数含まれていた。 また、らい菌はファゴソーム内で脂質を蓄積させるため、らい菌感染前後における脂質分解酵素HSLの動態を解析したところ、感染後にはその発現とリン酸化が抑制されており、脂質蓄積に寄与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
らい菌を取り込んだ宿主細胞の割合が高いほど、取り込んでいない細胞に由来する遺伝子発現が結果に影響する可能性が低いと考えられる。そのような条件を見出し、らい菌感染に応答した宿主遺伝子発現変動を網羅的に明らかにすることができた。一方で、特にHSLがらい菌感染後の脂質蓄積に関与することを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
らい菌感染に応答した遺伝子発現変動を、特にgene ontologyやクラスタリングによる相関解析によって検討し、細胞内寄生や免疫寛容などに重要な遺伝子を見出す。またこれらの遺伝子発現制御に至る細胞内シグナルを解析するために、質量分析によって細胞内タンパク質動態を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでに取得した遺伝子発現情報と、確立したらい菌感染モデルを活用し、RNAおよびタンパク質レベルの発現や修飾変動解析を行う。カテプシンなどのフォゴソーム内分解酵素、脂質代謝関連分子、免疫応答に関連する分子に特に着目し、その遺伝子発現の変動、上流のシグナル分子の質量分析による探索を行う。
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