研究課題/領域番号 |
23790493
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
南保 明日香 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (60359487)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エボラウイルス / 侵入 / エンドサイトーシス / 人獣共通感染症 |
研究概要 |
エボラウイルス感染は極めて高い致死率を伴う重篤なエボラ出血熱を惹起することから、早急に制圧しなくてはならない感染症の一つであるが、現時点においてエボラウイルス感染に対する有効な治療法は実用化されていない。エボラウイルスに対する抗ウイルス薬の開発において、ウイルス侵入過程は特に魅力的な標的の一つであることから、侵入機構の分子レベルでの解明は非常に意義深いと考えられるが、エボラウイルスの侵入における分子機構の詳細についてはまだ不明な点が多い。本研究課題においては、siRNAライブラリを用いたハイスループットスクリーニング系を確立し、この系を用いてエボラウイルスの侵入過程において重要な役割を果たす宿主因子の網羅的同定を行うことを最終目的としている。そこで第一に申請者の確立した、可視化系を基盤とし、ハイコンテンツイメージングシステムを用いたハイスループットスクリーニング系の確立を試みた。 申請者の研究成果より、エボラウイルス侵入は複数の過程から構成されることが明らかになった。各過程における効率について以下に示す方法で定量化を試みた。1.エボラウイルス粒子の細胞表面への吸着については、細胞表面において検出されるウイルス粒子由来の蛍光シグナルを定量する。2.マクロピノサイトーシスを介したウイルス粒子の細胞への取込み、および、3.取り込まれたウイルス粒子のエンドソームへの輸送については、マクロピノサイトーシスによって生成されるエンドソーム(マクロピノソーム)および後期エンドソーム特異的マーカーであるSNX5およびRab7にeGFPを融合したタンパク質をそれぞれVero-E6細胞に発現させ、ウイルス粒子との共局在の効率を定量化する。4.ウイルス粒子のエンベロープとエンドソーム膜との融合については、Rab7陽性エンドソ―ムにおける蛍光シグナルの強度およびその挙動を調べることで定量化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度において、申請者が開発した、エボラウイルス粒子の細胞への取込みを直接的に解析する生細胞イメージング系を基盤としたスクリーニング系の確立は完了した。また、平成23年度は米国および国内の研究協力者との打ち合わせを行い、共同研究における連携も問題なく進行している。しかしながら、スクリーニングを実行するために必須であるハイコンテンツイメージングシステムの本学における設置が昨年度末であったため、スクリーニング系の最適化の完了およびsiRNAライブラリを用いたスクリーニングの実行までは至らなかったため、判定を(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策を以下に示す。 現在、本学創薬科学研究教育センターに設置されたハイコンテンツイメージングシステムを用いて、前年度確立したスクリーニング系の最適化を試みている。最適化完了後はsiRNAライブラリを用いたハイスループットスクリーニングを行う予定である。スクリーニングの結果、得られた各種候補宿主因子についてさらに以下に示す解析を進める。 第一に、これらの宿主因子が実際にエボラウイルス侵入に関与するか否かを、BSL4施設において野生型エボラウイルスを用いた感染系を用いて検証する。また、エボラウイルス侵入における各種宿主因子の役割についてウイルス因子との相互作用を中心に解析を行い、その分子機構の解明を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は以下の通りである。 次年度の研究費(100万円)のうち80万円は、ハイコンテンツイメージングを用いたハイスループットスクリーニングの最適化およびこれを用いたsiRNAスクリーニングの実行のための特殊プレートや細胞培養のための消耗品類の購入に用いる。また、国内の研究者との研究打ち合わせ、米国での学会発表のための旅費として20万円を計上する予定である。 なお、執行残金10,464円の内訳は以下の通りである。このうち9,330円は平成23年度に実施したスクリーニング系の確立のための支払に使用する。経費の節減の結果生じた使用残1,134円に関しては、平成24年度に実施するスクリーニング系の最適化に使用する。
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