研究課題/領域番号 |
23790494
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
下平 義隆 山形大学, 医学部, 助教 (30445746)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | C型インフルエンザ / CM2 |
研究概要 |
これまでに当教室ではリバースジェネティクス法によりC型インフルエンザウイルス(C型ウイルス)を人工的に作製する方法を開発し、C型ウイルスのCM2がC型ウイルスの増殖における脱殻とウイルスゲノムの粒子内への取込みに関与する事を明らかにした。本研究の目的は、このような機能を担うCM2タンパク質の機能領域を明らかにする事である。 A型ウイルスではM2タンパク質の細胞質領域がゲノムのウイルス粒子への取込みに必要であることが報告されている。当教室の解析から、C型ウイルスのCM2の生化学的性状はA型のM2とよく似た構造をとることから、CM2の細胞質領域がゲノムの取り込みに関与している可能性もある。この可能性を、細胞質領域に変異を導入したCM2を用いてウイルスゲノムの取り込み効率を解析することで検証する。 CM2がゲノムの粒子へ取込むには細胞膜へ輸送されなければならないが、CM2タンパク質の細胞質領域欠失変異体がこの能力を失っていないことを確認するため、変異体を培養細胞で一過性に発現させ、間接蛍光抗体法により局在を確認した。CM2(115アミノ酸)の82番目の配列からN端方向に種々の長さに欠失させた変異体を作製し、細胞膜への輸送に関与する領域を絞り込むことができた。 さらに、細胞膜への輸送に特定の配列が関与する可能性を考え、3アミノ酸ごとのアラニン置換変異体を作製し同様の解析を行ったが、本解析では上記機能に関与する配列を特定することはできなかった。また、生化学的性状に影響を及ぼす配列も確認できなかった。一方、タンパク質の発現や安定性に関与する配列が存在する可能性が考えられた。現在これらの変異体を用いてウイルス様粒子(VLP)を作製しゲノムの取込み量を測定する準備を整えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度はCM2タンパク質のC側領域変異体の作製が主な内容となった。その過程でタンパク質の生化学的性状などに関する知見も得られた。これらの知見は以後の実験結果を解釈するのに貢献できるものと考えられる。解析予定の変異体の作製は終了したことから、ウイルス様粒子作製の準備は整った。しかし、現段階ではこれら変異体を用いたVLPの作製は行なっていないことから、計画の半分程度を達成したと思われる。 本計画では、CM2のイオンチャネル活性とウイルスゲノムの取込み及び脱殻との関連性についても解析する。この実験では、CM2の膜貫通領域をC型ウイルスのHE(イオンチャネル活性を持たない)の膜貫通領域と置換した変異体を用いるが、本年はこの発現系を構築し、野生型および変異体CM2が膜画分に回収されることを確認した。従って、実験材料の準備はほぼ完了した。しかし、この系もVLPを作製しこれらの変異タンパク質の機能を評価する実験については未着手のため、達成度は半分程度である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究体制が整ったCM2の細胞質領域の機能解析から行う。これらの変異体を使用した系でVLPを作製し、VLP中に含まれるゲノムをリアルタイムPCR法で定量する。これを夏までに目途を付けたい。 次に、CM2のイオンチャネル活性とゲノムの粒子内への取込みとの関連性の検証から行っていく予定である。この実験では、最初の系で使用するCM2変異体を変えるだけで解析可能であるため、解析は短期間で完了することが見込まれる。 最後にCM2のイオンチャネル活性と脱殻との関連性の検証を行う。これは上記2つの実験系とは異なる手法を用いるが、VLPの作製法は2番目の実験と同一であり、新たな材料及び手法を必要としないことから、2番目の実験と並行して実験を行うことで期間内に実行することが可能であると見込まれる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費に関しては、計画実行状況の遅れと平成23年度計画の遂行順序に変更が生じた事によるものである。平成24年度の研究計画に大幅な変更はなく、平成23年年度の遅れを取り戻すべく速やかな計画の遂行は必要であるが、経費は当初の計画通りに使用する予定である。
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