研究課題/領域番号 |
23790499
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
北川 善紀 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (00444448)
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キーワード | パラミクソウイルス / 自然免疫 / インターフェロン / アクセサリー蛋白質 / TLR-7/9経路 |
研究概要 |
本研究では、局所感染型と全身感染型のパラミクソウイルスがそれぞれ有するIFN-α産生を阻害する能力を分子レベルで解析し、局所感染型ウイルスの病原性発現における意義を解明することを目的とした。本研究課題では、局所感染型ウイルスであるセンダイウイルス、パラインフルエンザ2型ウイルスおよび3型ウイルスと、全身感染型ウイルスであるニパウイルス、麻疹ウイルスのアクセサリー蛋白質によるToll-like receptor(TLR)-7/9依存的IFN-α産生経路抑制の機構について解析を行った。 本年度は、パラインフルエンザ2型ウイルスのアクセサリー蛋白質Vの標的分子を解析するため、TLR-7/9依存的IFN-α産生経路に関わるシグナル伝達分子との相互作用を免疫沈降法によって解析した。その結果、V蛋白質はTRAF6、MyD88、IKKαおよびIRF7と結合することが示された。一方、IRAK1、IRAK4およびViperinとの結合は認められなかった。さらに、siRNA導入培養細胞やknockout MEF細胞を用いた実験の結果から、V蛋白質はTRAF6を介して、他のシグナル伝達分子と間接的に結合することが明らかになった。 次に、V蛋白質の欠損あるいは点変異体を作製して、TRAF6との結合に関わるドメインの探索を行った。その結果、V蛋白質のC末端に位置するトリプトファンリッチモチーフに変異を導入した変異体では、TRAF6および他のシグナル伝達分子との結合が消失することが分かった。また、同変異体は、IFN-α産生抑制活性も同時に消失することが分かった。 以上の結果から、パラインフルエンザ2型ウイルスのV蛋白質はTRAF6を介して他のシグナル伝達分子と相互作用し、TLR7/9依存的IFN-α産生経路を阻害することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、局所感染型のパラミクソウイルスであるパラインフルエンザ2型ウイルスのV蛋白質について、TLR-7/9依存的IFN-α産生経路の阻害機構の解析と、標的宿主分子の検索を進めてきた。その結果は「研究実績の概要」に記述したように、同ウイルスV蛋白質はTRAF6を介して、TLR-7/9経路に関わるシグナル伝達分子群(MyD88、IKKα、IRF7)と間接的に結合することを見いだした。また、V蛋白質のトリプトファンリッチモチーフがTRAF6および他のシグナル伝達分子との結合と、IFN-α産生抑制活性に重要であることを見いだした。以上の点から、研究がおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析結果から、パラインフルエンザ2型ウイルスのV蛋白質がTRAF6と結合し、それを介して他のシグナル伝達分子と相互作用することが明らかになった。今後も引き続き、V蛋白質の抑制機構について解析を進めていく。ユビキチンリガーゼであるTRAF6は、下流のシグナル伝達分子であるIRAK1やIRF7をK63結合型ポリユビキチン化して、それぞれを活性化させることがすでに報告されている。V蛋白質が、これらシグナル伝達分子のK63結合型ポリユビキチン化を抑制するかどうか解析を行う予定である。 本年度の解析から、V蛋白質のトリプトファンリッチモチーフがIFN-α産生抑制に重要であることが明らかになったので、当初の研究計画に従って、TLR-7/9経路抑制活性を喪失した変異V蛋白質をもつ組換えウイルスを作製して、ウイルス増殖などの性状を解析する予定である。また、トリプトファンリッチモチーフは、パラインフルエンザ2型ウイルスだけでなく、他の多くのパラミクソウイルスにも保存されていることから、同モチーフが、他のパラミクソウイルスにおいてもTRAF6との結合やIFN-α産生抑制に関わるかどうか解析を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費(次年度使用額)は618円ほどであり、当初計画した使用計画に大きな変更はない。研究費の多くは、研究を遂行するための消耗品の購入に使用する予定で、設備備品の購入の計画はない。また、研究成果を発表するために学会への出席にかかる経費、および論文の投稿にかかる経費に使用する。
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