研究課題/領域番号 |
23790500
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 佳 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (10593684)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | HIV-1 / ヒト化マウス / ウイルス因子 / Vpr |
研究概要 |
申請者はこれまで、ヒト化マウスモデルを用い、HIV-1感染急性期においてTregが枯渇すること、TregのHIV-1感受性が高いこと、そしてそれらがウイルス因子Vprに依存的であることを見出している。本年度は、特に研究計画2、3に則し、感染急性期におけるTregとVprによるHIV-1増殖亢進メカニズムの解明と、VprによるTregの枯渇促進メカニズムを解明を目的とした研究を実施した。 これまでの研究から、Vprには細胞周期をG2/M期で停止させる機能(G2/M arrest)とアポトーシスを惹起する機能があることが明らかとなっている(Andersen et al, Exp Mol Pathol, 2008)。そこで、感染後1週の野生型およびVpr欠損HIV-1感染マウスの脾臓からヒト細胞を回収し、Tn, Tm, Treg各サブセットを分画する抗体と抗HIV-1 p24抗体で染色する。さらに、細胞のゲノムDNAをHoechst染色し、各サブセットのHIV-1感染細胞, 非感染細胞の細胞周期をflow cytometry法により解析した。また、各サブセットのアポトーシスのレベルを、活性化caspase-3に対する抗体を用いて染色した。その結果、非感染Treg、Vpr欠損HIV-1感染Tregに比して、野生型HIV-1感染TregではG2 arrestおよびアポトーシスの頻度が有意に高いことが明らかとなった。 さらに、申請者は、別のHIV-1アクセサリータンパク質であるVpuの生体内HIV-1増殖における解析も行い、Vpuが生体内HIV-1増殖を促進する役割を発揮することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、特に研究計画2「感染急性期におけるTregとVprによるHIV-1増殖亢進メカニズムの解明」と、研究計画3「VprによるTregの枯渇促進メカニズムを解明」に則した実験を行い、当初の想定と合致する結果を得ることができた。これらは当初、研究2年目終了時の達成を目標としたものであり、当初の計画以上に順調に研究が進展していることを表している。 また、研究の幅を広げるために、別のHIV-1アクセサリータンパク質の生体内ウイルス増殖における機能解析に関する研究も展開し、開始1年で実験・解析を完了、論文化することに成功した。さらに、これまで得られた結果について精力的に国内外の学術集会で発表を行い、また、活発な情報交換を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画1「感染急性期においてTregがHIV-1のamplifierとなっている可能性の追求」に特に傾注し、実験を行う。具体的には、可溶性IL-2とにジフテリア毒素の融合タンパク質(denileukin diftitox [DD])の投与により、人為的に生体内Tregを除去させる(Morse et al, Blood, 2008)。Tregが感染急性期におけるHIV-1 amplifierとなっていることを多角的に検証するために、DDを投与してTregを消失させたヒト化マウスにHIV-1を接種し、感染後2,4,7日における血漿中ウイルス量をreal-time RT-PCR法により定量する。コントロールとして、PBSを投与したマウスでも同様の実験を行う。そして、DDを用いたTregの消失により、同時期における血漿中ウイルス量が低下するか否かを評価し、感染急性期のHIV-1増殖におけるTregの役割を明らかにする。 また、前年度の海外学術集会で得られた情報を基に、さらに詳細な研究を行う。具体的には、VprによるTregの枯渇によって免疫活性化が惹起される可能性について、活性化マーカーであるHLA-DR、CD38、CD69などを指標として評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒト化マウスを用いた実験を継続して実施するため、マウス購入費・維持費、ヒト造血幹細胞の購入費として使用する。また、DDを用いた実験を行うため、DDの購入費として使用する。そして、これまで得られた研究成果を学術論文として発表するための諸経費(論文校正、投稿料、掲載料、など)として使用する。
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