核内で転写・スプライシングされるHIV-1の4kb-RNAと9kb-RNAの細胞質への輸送は、ウイルスタンパク質Revを介したCRM1経路で行われる。しかし、それとは異なるTAP経路も利用される可能性が考えられ、TAP経路も利用されるのか、あるいはTAP経路は抑制されるのかは不明であった。これまで申請者らは、RevがそれらのRNAの核外輸送においてTAP経路の利用を抑制することを示唆する結果を得ていた。本研究では「4kb-RNAと9kb-RNAの核外輸送においてRevがどのようにTAP経路の利用を抑制するのか」を明らかにすることを目的とする。初めに、RevによるTAP経路の抑制は、RevがTAPのRNA結合を阻害することによって行われると考え、TAPのRNA上へのリクルートを調べた。その結果、Revは4kb-RNAと9kb-RNAを模擬するモデルRNA上へのTAPのリクルートを阻害することがわかった。さらに、TAPとRNAとのアダプタータンパク質であるALYのRNA結合もRevによって阻害されることがわかった。ALYのRNA結合にはRNAのキャップ構造に結合するCBCとの相互作用が重要であることが知られていたため、次にRevとCBCとの相互作用を調べた。その結果、RevはCBCに直接結合することを見出した。したがって、RevがALYとCBCとの相互作用を競合的に阻害することによって、TAPのウイルスRNA上へのリクルートを阻害するというモデルが考えられた。これまでの結果を論文作成中である。また、本研究課題と関連して、mRNA にU snRNA輸送因子がリクルートされない分子機構を明らかにしたので、論文報告した(Science.2012 Mar 30;335(6076):1643-6)。
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