研究課題
筆頭研究者らが、以前同定した、神経組織特異的VZVエントリーレセプターであるMAGとは別に、VZVが宿主への最初の侵入門戸のひとつとする血球系細胞のレセプターを同定することを目的とした。MAGとの相同性検索から、血球系細胞表面に発現しているVZV グリコプロテインB (gB)のレセプター候補分子を挙げ、それら分子から、VZV gB免疫グロブリン融合タンパク質との結合の有無を検討することによって、VgBR2を同定した。さらに、VZV gB, gH, gL発現細胞とVgBR2発現・非発現細胞を用いた、膜融合アッセイによって、VgBR 2非発現細胞では膜融合が起こらないのに対して、VgBR2発現細胞は、gB, gH, gL発現細胞との高効率の膜融合を認めた。一方、VgBR2非発現であるコントロール細胞が、VZV感染抵抗性であるのに対して、VgBR2強制発現細胞は、VZV感受性となった。さらに、gBとVgBR2の結合を阻害することによって、VgBR2強制発現細胞及びVgBR2を発現している血球細胞におけるVZVの感染は、特異的に抑制された。筆頭研究者らの研究により、MAGを介する、VZVの感染は、VZV上、MAG発現細胞すなわち宿主細胞上の糖鎖修飾にも依存していること が明らかとなってきた(Suenaga et. al. 論文準備中)。VgBR2はMAGとの相同検索から同定した分子であるが、gBとVgBR2との結合を介したVZVの感染においても、糖鎖の関与が明らかとなった(Suenaga et. al. 論文投稿中)。さらに、gBレセプターのみならず、gHレセプターも、現在同定・解析中である。
3: やや遅れている
現在、新規のVZV gHレセプターであるVgHRに関しても解析中であり、こちらに関しても、VgBR2と同様の結果を得つつある(Suenaga et. al. 論文準備中)。しかし、研究計画に含まれる、VZVの膜融合機構の追及に関しては、gB、gH、gL、VgBR2、VgHRの全てが揃わないと進められない類いの解析である。現在、VZVの膜融合機構の追究に用いる実験系を構築している。即ち、当初、bimolecular fluorescence complementation (BiFC)アッセイを用いて、共焦点顕微鏡下の解析で、膜融合機構の解析を行っていたが、これまでの細胞、gB、gH、gL分子だけでは不十分である事が判明し、また、顕微鏡などの機材の能力も不足していることがわかった。この実験系に適した標識抗体、標識VgBR2、標識VgHRなどを作出し、高解像度の顕微鏡を使用することによって、より詳細な膜融合機構の解析を可能にできるものと考えている。
VZVの膜融合機構の追究における、高解像度顕微鏡などの機材に関しては、大学内の他研究室所有で、より高性能の機材を使用させてもらう運びとなり、ハード面での実験阻害因子はクリアされるものと考えている。この実験系に適した標識抗体、標識VgBR2、標識VgHRなどの実験資材は、揃いつつあるが、より詳細にかつ精密に解析するに当たっては、観察容器自体の自家蛍光を除去するなど、改善すべき問題点も残っている。他に改善すべき点として、現在、膜融合が起こるであろう場所を予想して、タイムラプス顕微鏡で観察している点が上げられる。膜融合が完成するのに、約1日を要することから、予想した部位で膜融合が、観察できないことがあるなど、非常に効率が悪い。膜融合解析を、現在のプロトコール下ですすめるとともに、より効率よく、短時間で結果を得ることができるようなシステムの改善もはかっていく。
VZVの膜融合機構の追究において、高解像度顕微鏡下で、より詳細な解析を行うための、解析機器と試薬の調整、本解析専用の観察用容器の作製に充当する。即ち、通常の細胞培養液、プラスミド作成用試薬、抗体精製用試薬、抗体標識用試薬、さらに、観察容器の自作のための、多様な素材購入費などに研究費を使用する予定である。
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Int. Immunol.
巻: 25 ページ: 235-246
10.1093/intimm/dxs155
http://immchem.biken.osaka-u.ac.jp/