研究課題/領域番号 |
23790505
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
入江 崇 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70419498)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | エンベロープウイルス / マトリクス蛋白質 / 粒子形成 / 出芽 / 細胞骨格 |
研究概要 |
ウイルスの生活環における様々な段階で、宿主の細胞骨格系が関与することが古くから報告されているが、その機能的詳細はほとんど明らかにされていない。本研究では、センダイウイルスをモデルに、その出芽の原動力となるマトリクス蛋白質が、単独発現で細胞表面に繊維状構造物の形成を誘導するが、出芽欠損型変異マトリクス蛋白質ではそれが誘導されないという観察を端緒に、その構造形成の実態と、ウイルスの粒子形成、出芽段階における意義を解明することを目的とした。 本年度は、上記マトリクス蛋白質の発現によって誘導される繊維状構造物が、宿主のアクチン細胞骨格の再構築により形成されることを確認した。この際、宿主のアクチン骨格の制御に関係する3種類の主要なRhoファミリーGTPaseの一つであり、フィロポディア形成に関与するCdc42が活性化されること、繊維状構造の形成がCdc42依存的であることを明らかにした。また、マトリクス蛋白質の発現によって形成されるウイルス様粒子の形成、出芽効率が、ドミナントネガティブ型Cdc42変異体の発現によって特異的に抑制されることを見出した。 以上の結果から、マトリクス蛋白質はCdc42依存的にダイナミックにアクチン細胞骨格の再構成を誘導し、ウイルスの出芽、粒子形成に利用している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は平成23~24年度の2年間に渡って実施する予定であるが、初年度の目的として、マトリクス蛋白質によって誘導される細胞の形態変化の実態、これに関与する宿主因子の同定、ウイルスの生活環における意義を、マトリクス蛋白質の単独発現により形成されるウイルス様粒子を用いて簡単化した系で明らかにすることを目指した。結果、マトリクス蛋白質による細胞表面の形態変化がアクチン細胞骨格の再構成によるものであることを明らかにするとともに、これに関与する宿主因子としてCdc42を同定することができた。さらに、これが実際にマトリクス蛋白質によるウイルス様粒子の形成、出芽に重要な役割を果たしていることを示した。 次年度は、これらの成果を基盤に、マトリクス蛋白質により誘導される細胞骨格の再構築の詳細な分子機序を明らかにするとともに、その意義についてウイルスレベルでの解析を進めることが可能であり、本研究は概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」で述べたように、センダイウイルスのマトリクス蛋白質が、宿主のアクチン細胞骨格のCdc42依存的な再構築を誘導し、これがマトリクス蛋白質によって形成されるウイルス様粒子の出芽に重要な役割を果たしている可能性を明らかにすることができた。 次年度は、これらの成果を基盤に、マトリクス蛋白質による細胞骨格制御の詳細な分子機序を明らかにするとともに、ウイルスレベルでその意義を探る。また、得られた成果が他のウイルスにも当てはまるのか、その普遍性についても検討していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度と同様に、通常の研究試薬、器具類への支出が研究費の主な使途である。また、得られた成果の国内外での研究会、学会での発表や、論文での成果発表における支出を予定している。 また場合によっては、電子顕微鏡での観察など、外部の研究者の協力を仰ぐ可能性があり、これに必要な経費を支出する。
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