TLRsやRLRsによるウイルス認識機構は、ウイルス認識に関わる核酸の構造に至るまで、この10年で多くのことが理解された。これとは対照的に、NLRP3インフラマゾームによるRNAウイルス認識機構は不明な点が多い。申請者は以前にインフルエンザウイルスでは、プロトン選択的なM2タンパク質がNLRP3インフラマゾームを活性化させていることを明らかにした。本研究では、麻疹ウイルスの非構造Vタンパク質がNLRP3と相互作用してその活性化を抑制していることを明らかにした。また同じRNAウイルスの脳心筋炎ウイルス(EMCV)が、その非構造2Bタンパク質でNLRP3インフラマゾームを活性化させていることを明らかにした。このNLRP3の活性化には、2Bタンパク質が小胞体やゴルジ体に局在することが必要で、これらの中で高く保たれているカルシウムイオンを細胞質中へ流出させる反応がNLRP3インフラマゾームの活性化に必要であった。このようなウイルスのイオンチャネルタンパク質(viroporin)による、新しいウイルス認識機構の概念は、最近になって認識されつつあり、Triantafilouらは、human respiratory syncytial virus(RSV)のviroporin SHが、インフラマゾームの活性化に関わっていることを示している。このようにRNAウイルス感染によるNLRP3の活性化には、TLRやRIG-IがウイルスRNAを認識しているのとは異なり、細胞質中のイオンバランスの変化が必要であることが示唆された。これはこれまでに知られていたRNAウイルス認識機構とは異なる全く新しいウイルス認識機構である。
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