研究課題
E型肝炎ウイルス (HEV) の感染細胞からの放出には、multivesicular body (MVB) sorting機構が重要であり、HEVはこの機構を細胞膜上ではなく、エンドソーム膜上で利用していることが示唆されている。今年度は、宿主細胞に由来する粒子表面の膜成分の抗原性ならびにHEVの放出に関与するエンドソーム輸送系について解析を行った。膜に覆われたHEV粒子を特異的に認識するマウスモノクローナル抗体 (TA1708) を作製し解析に用いた結果、ウイルス粒子の表面には脂質膜が存在し、その表面抗原の1つがトランスゴルジネットワーク (TGN) に由来するtrans-Golgi network protein 2 (TGOLN2) であることが明らかとなった。また、各種薬剤を用いてエンドソームの輸送を阻害した結果、初期エンドソームの移動を阻害すると、ウイルスの放出が抑制された。一方、後期エンドソームの移動を阻害してもHEVの放出に影響は認められなかった。本研究により、HEVの放出には宿主因子であるTsg101およびVps4が重要な役割をもち、多くのエンベロープウイルスで報告されているMVB pathwayが関与していることが明らかとなった。また、HEVの粒子表面にはTGNに由来するTGOLN2が存在していることに加え、膜に覆われたウイルス粒子が感染細胞内に産生されていることを見出した。以上の結果は、粒子表面の膜成分は細胞膜ではなく、HEVがMVB pathwayを利用してMVB内腔に出芽することにより獲得するエンドソーム膜であることを示唆している。また、後期エンドソームの移動を阻害してもウイルスの放出に影響が認められないことから、HEVはエクソソーム分泌経路を利用して細胞外に放出されることが示唆された。
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