研究課題
本研究では感染性C型肝炎ウイルス(HCV)粒子産生系を用いて、これまでにhalopemideがHCV分泌を阻害することを示してきた。またhalopemideの抗HCV効果はphospholipase D (PLD)阻害を介していることが示唆された。当年度は主に1)PLD 阻害剤のウイルスおよび宿主分泌タンパク質放出への影響(PLD 阻害剤の特異性の検証)、2)PLDとHCVタンパク質との相互作用の解析、3)PLD 阻害剤のHCV分泌阻害機構の解析、4)halopemide誘導体展開による、より抗HCV効果の高い化合物の同定、に関して主に研究をおこなった。1)halopemide処理によって感染性HCVおよびHCV coreタンパク質放出は著明に低下したが、Apolipoprotein A-I, Eなどの宿主タンパク質およびHBV分泌には大きな影響を与えなかった。2)PLDとHCV coreタンパク質が相互作用しており、これはhalopemide処理によって解除されることが観察された。3)halopemide処理によってHCV coreタンパク質はGolgiに蓄積した。4)6種類のhalopemide誘導体を用いた解析より、VU0364739がhalopemideよりも強い抗HCV効果をもつことが判明した。以上のことより、PLDはHCV放出に特異的に関与しており、Golgiからの輸送を制御している可能性が考えられた。またその特異性はPLDとHCV coreとの相互作用によるものであることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究結果より、PLDがHCV産生を制御することおよびその制御メカニズムが明らかとなった。これまでHCV放出過程を制御する機構はほとんど明らかにされていなかったが、本研究結果はその一端を示しただけでなく、この過程が抗HCV剤の標的となり得ることを示唆するものである。本研究結果はすでに国内および国際学会で発表済みであり、学術論文として投稿準備中である。このように本研究は当初の予定通りに順調に研究が進行している。
本研究結果はウイルス放出機構が抗ウイルス剤の標的となり得ることを示唆したものである。これを新規抗HCV剤開発につなげるために、HCVのさまざまな遺伝子型に対するPLD 阻害剤の効果、インターフェロンやプロテアーゼ阻害剤など既存の抗HCV剤との併用による抗HCV効果、長期処理による薬剤耐性ウイルス出現の有無、プロテアーゼ阻害剤耐性HCVに対する効果、等を調べる。またPLDによるHCV放出メカニズムをさらに明らかにするために、電子顕微鏡によりPLD 阻害剤存在下でのHCV coreを観察する。
次年度も主に培養細胞を用いたウイルス感染実験に必要な各種培養関連試薬、プラスチック/ガラス製品、タンパク質実験試薬、RNA関連実験試薬などの購入のため物品費を計上する。
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Biochim Biophys Acta
巻: 1820 ページ: 1886-1892
J Clin Microbiol
巻: 50 ページ: 1943-1949