研究課題/領域番号 |
23790515
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
モイ メンリン 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 研究員 (40597499)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 感染症 / ウイルス / 感染免疫 / ワクチン |
研究概要 |
デング熱一次感染に誘導された非中和交叉抗体は再感染時に異なる血清型のウイルス感染を増強させる。この抗体依存性感染増強という現象(antibody-dependent enhancement, ADE)が重症化の一要因と考えられている。そこで、我々は本研究室で確立した新規ADEアッセイ(FcγR発現BHK細胞)および非FcγR発現BHK細胞を用いて抗フラビウイルス抗体における感染増強活性を検討した。さらに、抗体および接種ウイルス濃度の両パラメーターを検討し、ADE活性を測定した。この2つのパラメーターをADEアッセイにて検討したところ、抗体濃度がウイルス:抗体比率より重要であることが示唆された。 従来のADE活性測定アッセイに用いられたFcγRを有する細胞はウイルス血清型およびウイルスstrainとの間の感染感受性に差があることから、inoculation doseに相違が生じたため、患者血清および抗体におけるADE活性評価および標準化が困難であった。よって、我々はFcγR発現細胞を用いた新規ADEアッセイによりADE活性測定のパラメーターおよびADE測定へ影響を及ぼすファクターを同定することを試みた。本研究で確立したADEアッセイはフラビウイルス感染によって引き起こされた免疫応答の解析に有用であることが示唆された。さらに、本研究により有効なワクチン開発の評価が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗フラビウイルス抗体はデングウイルスに対する感染増強(ADE)活性を保有する可能性があることが知られている。そこで、我々はヒト血清および抗フラビウイルス抗体におけるADE活性を測定する方法(プロトコール)確立することを試みた。さらに、二つパラメーター (1)抗体濃度 (2) ウイルス濃度 を検討した。階段希釈した抗フラビウイルス抗体4G2抗体(1E-1 - 1E-4)を階段希釈したデングウイルス2型(1E2 - 1E6PFU/ml)と反応させ、感染増強活性を検討した。本研究で樹立したADEアッセイは、inoculation dose の1E2 - 1E6PFU/ml 感染増強活性の測定が可能であることが明らかとなった。さらに、両パラメーターを検討したところ、本ADEアッセイにおいては抗体-ウイルス比率よりもウイルス濃度がADE活性の決定パラメーターであることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
ADE活性の主な決定パラメーターが抗体濃度であることが、我々のFcγR発現細胞を用いたADEアッセイによって明らかとなった。このADEアッセイおよび新規プロトコールを用いて、デング熱患者血清および他のフラビウイルス患者血清におけるADE活性を検討する。さらに、日本脳炎ウイルスワクチン被接種者の血清におけるデングウイルスに対するADE活性を検討する。得られたデータにより、フラビウイルス感染によって引き起こされた免疫応答および感染時におけるフラビウイルス抗体の役割解明が可能となり、さらに、デング熱発症機序解明につながることが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の本研究は、抗フラビウイルス抗体における感染増強活性実験用消耗品の購入に使用する予定である。さらに、本研究より得られた成果を社会に発信するため、一部の研究費は国内・外学術誌の印刷料および学会参加費として使用する予定である。
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