本研究では、FcγR発現細胞を用いてフラビウイルス患者における抗体依存性感染増強活性(ADE)に注目し、デングウイルス(DENV)による出血熱発症メカニズムを免疫学的に解析し、デング熱の重症化リスクファクタおよび出血熱病態の解明することを目的とした。デングウイルスおよび日本脳炎ウイルス(JEV)感染後またはJEVワクチン接種後に経時的に採取した患者検体を用いてADE活性の解析を行うことによりデングウイルスに対する免疫応答の解析が可能となる。デング出血熱に関与するADE活性または防御に関与する中和活性を有する抗体解析の手段としては、FcγR発現細胞にて新規中和アッセイおよびADEアッセイで感染増強レベルまたは中和レベルの測定により、生物的に意義のある抗体活性のレベル測定が可能となる。その結果、DENV感染後の患者の急性期検体においては、ADE活性が認められ、後期の検体においては中和活性が確認された。DENVと同じフラビウイルス科に属するJEVによるDENVに対する免疫応答を比較するのに、JEV患者検体を用いた。JEV患者では、DENVに対するADE活性が認められたがDENVに対する中和活性は確認できなかった。同様に、JEVワクチン接種者84人の検体を用いてもDENVに対する中和活性が認められなかった。DENVと同フラビルイス科のJEV感染およびJEVワクチン接種による誘導された免疫応答は、DENVの感染を増強させることが可能であるが、誘導された中和・感染増強活性のレベルはDENV感染後の免疫応答と異なった。我々はDENVおよびJEV感染に誘導された抗体がADE活性を有することを証明した。さらに、本研究の結果から中和活性が低いまたは存在しない条件下においては、ADE活性がDENV感染症の重症化に重要に関与することが示唆された。
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