|
エンテロウイルス71（EV71）はピコルナウイルス科エンテロウイルス属、A群ヒトエンテロウイルスに分類される、手足口病の原因ウイルスである。一般的に手足口病は重篤化することはないが稀にEV71感染では神経疾患を伴う死亡例が報告されている。しかしEV71の宿主域は狭く成体マウスでは神経病原性は観察されないため、適した動物モデルが確立されていない。従って、神経病原性発症機構は明らかにされていない。そこでEV71神経病原性発症機構解明のためEV71の受容体であるヒトSCARB2を発現し、EV71に感受性を持つマウスの作出を目的とし実験を行った。
前年度までにヒトSCARB2の発現分布がヒトと類似のトランスジェニックマウス（hSCARB2-Tgマウス）の作製を終了した。本年度はhSCARB2-Tgマウスの性状解析を行うことを目的に、ウイルス接種経路、接種ウイルス株、ウイルス増殖部位の解析を行った。EV71/Isehara/Japan/99株を脳内、静脈内、腹腔内、胃内接種するとどの接種経路においても四肢弛緩性麻痺および運動失調の神経症状を発現した。EV71/Isehara/Japan/99株以外にBrCr/USA/70株、SK-EV006/Malaysia/97株、C7/Japan/97株の接種よっても神経症状を発現した。次にウイルスを静脈内接種後、臓器内のウイルス力価測定および病理学的解析を行ったところ、神経症状を発現したhSCARB2-Tgマウスの脳および脊髄で高いウイルス力価を検出した。また大脳、小脳、中脳、橋、延髄、脊髄の神経細胞にウイルス抗原を見出すことができ、神経細胞脱落および細胞浸潤が観察された。従って、このhSCARB2-Tgマウスにおける病態とEV71標的部位はヒトの症例と類似していることからよいEV71感染動物モデルであると考えられる。
|
