小腸パイエル板の上皮層に存在するM 細胞は 管腔内の抗原の取り込みを行い、粘膜免疫応答の開始に働く。M 細胞と免疫細胞の相互作用はM細胞分化と機能に重要であると果考えられている。本研究ではM細胞に高く発現するケモカインCCL9とその受容体CCR1に着目し、パイエル板M細胞と免疫細胞との相互作用の生理的意義を解析した。 マウスCCR1受容体の検出は適切な方法が無かったため、検出方法の開発を行った。リガンドのCCL9にヒトIgG Fc領域を融合させたCCL9-Fcを作製することによってCCR1受容体を発現する細胞群をフォローサイトメトリーで解析する実験系の開発に成功した。CCL9-Fcはパイエル板CD137 陽性形質細胞に強く反応し、セルソーティングによって分離したCD137陽性形質細胞にはCCR1 mRNAが高く発現していた。次にCCR1抗体を作製し、パイエル板におけるCCR1陽性細胞の局在を解析したところ上皮下領域と粘膜固有層にCCR1陽性細胞が検出された。In situ hybridization法では上皮下領域にCCR1 mRNAの反応が強く確認できた。CCL9 KOマウスとCCR1 KOマウスの解析を行ったところ、CCL9 KOマウスにおいてM細胞数に若干の減少が見られたが、サルモネラ菌感染時の糞便中IgA産生には大きな差は見られなかった。CCR1 KOマウスではM細胞数、IgA産生ともに変化は見いだせなかった。 本研究によってこれまで困難であったマウスCCR1発現細胞の検出が行えるようになった。CCR1は大腸癌や関節リウマチなどの病変に関わることが示唆されている。マウスにおける検出方法の開発は今後のCCR1研究に有用である。
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