研究課題
本研究ではGATA3の翻訳後修飾に着目し、GATA3がどのように複合体の構成を変化させ、それに伴ってどのようにターゲット遺伝子を変化させているのか解析し、Th2細胞分化のマスター転写因子であるGATA3がどのようにTh2細胞の分化を制御しているのか包括的に理解するとともに、アレルギー疾患に対する新たな治療戦略を提唱することを目的とする。平成23年度は、下記の研究を行った。1-1. 機能的なGATA3の翻訳後修飾のスクリーニング申請者はこれまでに行ってきた質量分析 (LC-MS/MS)の結果からから、Th2細胞の中でGATA3が様々な翻訳後修飾 (リン酸化、アセチル化、メチル化)を受けている事を見出しており、その機能解析を行った。これらの翻訳後修飾のうち、リン酸化を受けるS316が抑制性複合体NuRD複合体との結合やTh1細胞分化の抑制に重要であること、メチル化を受けるR261がTh2サイトカインのうちIL-5の活性化にのみ重要であることがメチル化状態をミミックした変異体を用いた解析により明らかになった。現在その分子メカニズムを解析するとともに、in vivo解析に向けて変異型GATA3を発現するTgマウスの作製を開始した。1-2. NuRD複合体との会合を抑制するリン酸化修飾の解析申請者はリン酸化を受けたGATA3がTh2細胞の中でどのような複合体を形成しているのか、また、どのような遺伝子の発現を制御しているのかを解析する目的で、リン酸化GATA3特異的な抗体の作製を試みた。しかし、今回作製したLotではリン酸化GATA3を特異的に認識することが出来なかった。現在、免疫するラビットの個体数を増やし、免疫方法や回数の最適化を行っている。
2: おおむね順調に進展している
1-1の実験について計画以上の進展があり、これまでに同定した翻訳後修飾の中から機能的な翻訳後修飾のスクリーニングを終え、非常に興味深い2つの翻訳後修飾を同定することが出来た。これらの翻訳後修飾について詳しい機能解析を行い、その分子メカニズムが明らかになりつつある。さらに、in vivo解析に向けてこれらの翻訳後修飾を受けるアミノ酸残基に変異を導入したGATA3を発現するTgマウスの作製を開始している。1-2の実験については、リン酸化GATA3特異的な抗体の作製がうまくいかず、当初の計画よりもやや遅れているが、現在遅れを取り戻すべく、リン酸化GATA3特異的な抗体作製の最適化を行っている。全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
同定した2つの翻訳後修飾についてはさらなる詳細な分子メカニズムを解析し、論文発表することを目指す。また、in vivo解析に向けて作成中のTgマウスをGATA3cKOマウスと掛け合わせ、変異型GATA3をT細胞特定的に発現するマウスを作製し、喘息モデルなどのTh2型病態動物モデルを用いてGATA3の翻訳後修飾の生理的な役割について解析を行う。遅れているリン酸化GATA3抗体を用いた機能解析は抗体ができ次第開始する予定である。
同定した2つの翻訳後修飾についてはさらなる詳細な分子メカニズムを解析並びに変異型GATA3をT細胞特定的に発現するマウスを作製するための、試薬・プラスティック・マウス等に研究費を使用する。又、海外の学会での発表並びに論文発表等にも使用する予定である。
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