研究課題
本研究はCD4陽性T細胞を用いて、ポリコーム群(PcG)及びトライソラックス群(TrxG)複合体やその標的遺伝子Gata3による転写制御機構を明らかにすることを目的としている。平成23年度は上記分子のChIP-seq解析を中心としてgenome-wideレベルでの機能解析を遂行した。年度始めにGATA3 ChIP-Seq解析の論文が受領され、それに関連した学会発表も複数回行った。この研究でははじめにTh1/Th2細胞を用いて、GATA-3の標的遺伝子を網羅的に同定した。次にGATA-3の結合と、それらの標的遺伝子座のヒストン修飾状態の変化や発現レベルの変化との関連性を評価した。今回はTh2細胞分化誘導時におけるGATA-3の役割について明らかにしたが、並行してTh2細胞機能維持におけるGATA-3の役割の網羅的解析も行っており、現在論文を執筆中である。また、PcGおよびTrxG複合体に関しては1報の英文論文と4報の邦文総説を執筆した。現在は(1) ES細胞、B細胞、CD4 T細胞を用いた、Ezh2 (PcGの1種), Bmi1 (PcGの1種), Menin (TrxGの1種)およびRNAPIIのChIP-seq解析を進めている。ピーク領域の抽出や遺伝子毎のtag countの算出などの基礎データの処理は既に終了している。また、UCSC genome browser上で閲覧できるBedGraph形式ファイルへの変換も終了した。(2) PcGやTrxG複合体の結合の"質"や"量"を評価可能なChIP-seqデータ新規解析法の開発(オープンソース型プログラミング言語Rを用いる)にも目処がつき、論文投稿の準備を進めているところである。 (3) 定量的PCR法による、PcG/TrxG標的遺伝子の発現プロファイルの作成は現在進行中であり、今後は更なるデータの取得を目指す。
1: 当初の計画以上に進展している
予定していたChIP-Seqのデータはほぼ全て取得済みである。B細胞、CD4 T細胞のデータだけでなく、ES細胞のデータも取得しており、これは予定以上の進行状況である。Bioinformatics技術の確立に関しては、単なる標的遺伝子の抽出のみならず、PcG/TrxGのPcGやTrxG複合体の結合の"質"や"量"を評価可能なアルゴリズムを開発することができた。特に結合の形を評価する上で重要なLR indexやsharp indexなどの計算式は、本研究独自のものであり、これらを提唱することにより今後のgenome-wide規模の研究に大きな影響を与える可能性を秘めている。
当初の計画に沿って、平成24年度はPcG/TrxGによる転写因子結合の制御機構の解析およびMenin遺伝子欠損マウスを用いたin vivo免疫応答の解析を行う。前者は、RNAPIIのリン酸化に着目して研究を進める。後者に関しては、Th2細胞やTh17細胞を移入する系を用いて気道炎症モデルによる病態解析を行う予定である。
PcG/TrxGによる転写因子結合の制御機構の解析およびMenin遺伝子欠損マウスを用いたin vivo免疫応答の解析を行う為の、試薬・プラスティック・マウス等に使用する。又、海外の学会での発表並びに論文発表等に使用する予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)
J. Immunol.
巻: 186 ページ: 6378-6389
10.4049/jimmunol.1100179
Cancer Res.
巻: 71 ページ: 4790-4798
10.1158/0008-5471.CAN-10-1572