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2011 年度 実施状況報告書

腸内細菌制御による炎症性腸疾患治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 23790524
研究機関東京大学

研究代表者

新 幸二  東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60546787)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード腸管免疫 / 制御性T細胞 / 腸内細菌
研究概要

本年度の研究において、腸内細菌が存在しない無菌マウスの大腸には制御性T細胞(regulatory T cells ;Treg)が少なく、SPF (specific pathogen free)環境下で飼育した通常のマウスの大腸では非常に多く存在していることを明らかにした。Tregは抑制性の機能を持つT細胞であり、Tregが腸炎の発症を抑制していることが示唆されている。そのため、大腸に存在するTregは腸内細菌によって誘導され腸炎の制御に貢献していることが考えられた。そこでまず、無菌マウスに特定の腸内細菌を定着させノトバイオートマウスを作成し、どのような細菌がTregの誘導に関与しているかを解析した。その結果、クロストリジウム属に属する腸内細菌群がTreg誘導に関与していることを突き止めた(Science (331) 337-341, 2011)。また、クロストリジウム属が多く存在するマウスでは通常マウスと比較して腸炎の発症が抑えられていた。 興味深いことに、ヒト炎症性腸疾患と健常者の腸内細菌叢の構成割合を比較した報告によると、クロストリジウム属細菌が健常者と比較してヒト炎症性腸疾患の患者で減少していることが示されている。このことからマウスと同様にヒトでもクロストリジウム属細菌が炎症を抑える働きを持つTregを誘導し、腸炎の抑制に貢献していることが考えられた。 以上のことから、クロストリジウム属細菌によるTregの増加機構の解明という本研究成果は、ヒトにおいて炎症性腸疾患の治療や予防への応用が予想される非常に意義深い発見であると考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究期間内に明らかにすることa.に挙げたTreg 細胞を誘導するクロストリジウム属の特定については、46 株のクロストリジウム属細菌がおそらくすべて必要ではないかという結果を得ている。b.のクロストリジウムのTreg 細胞誘導メカニズムの解析では、詳細なメカニズムはまだ分かっていないが、クロストリジウム属細菌が上皮からのTGF-betaの産生を促していることが明らかになった。c. のTreg 細胞の誘導による腸炎の抑制については、クロストリジウム属細菌の増加によりDSS腸炎、Oxazolone腸炎の発症が有意に抑制されることが明らかになった。d. のTreg 細胞からのIL-10 産生メカニズムの解析については、現在DNAマイクロアレイ解析を行っているところであり、何か新しい遺伝子が見るかるのではないかと考えている。e. のヒトの腸内常在細菌によるTreg 細胞の誘導においては、クロロホルム処理をしたヒト便を無菌マウスに投与しTregの増加を確認しており、今後どのような細菌がTreg誘導に関与しているかを突き止めていく予定である。

今後の研究の推進方策

テーマa. Treg 細胞を誘導するクロストリジウム属の特定については、同定したTreg誘導能を持つ46菌株のクロストリジウム属細菌を1つずつまたは複数個ずつ無菌マウスに投与し、どの菌種がTreg 細胞の誘導に関与しているのかを突き止める。テーマb. クロストリジウムのTreg 細胞誘導メカニズムの解析については、現在クロストリジウムがTGF-betaの産生を促進していることを突き止めているので、メタボローム解析を通して代謝産物がTGF-betaの促進に関与しているかを解析する。テーマc. Treg 細胞の誘導による腸炎の抑制において予定していたAltered Schaedler Flora (ASF)を用いてTreg誘導能をもつクロストリジウム属細菌の役割の解析については、ASFが入手困難なため代替実験を計画中である。SPFマウスを用いてクロストリジウム属細菌を増加させ腸炎抑制効果は検証済みであるので、この系を用いて代謝産物による腸炎抑制効果の検討を行う。テーマd. Treg 細胞からのIL-10 産生メカニズムの解析については、現在のところIL10を産生しているTregと産生していないTregの遺伝子発現の違いをDNAマイクロアレイにより解析中である。IL10産生Tregにおいて発現の高い遺伝子を解析しIL10の産生に関与しているかを検討する。テーマe. ヒトの腸内常在細菌によるTreg 細胞の誘導においては、クロロホルム処理ヒト便の無菌マウスへの投与によりTregの上昇を確認している。今後どのような細菌が存在しているのかを培養と16Sメタゲノム解析により解析を行い、さらに絞り込んだ細菌を無菌マウスに投与し、Treg誘導能をもつヒト腸内細菌を同定する。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究において、無菌マウスを用いたノトバイオートマウス作成が必要であり1 匹20 千円で1 回の実験につき10 匹使用(1 回計200 千円)し、この実験を4回実験を行う予定であり、実験動物費用として800 千円必要である。また、メタゲノム解析用の次世代シークエンス用の試薬(2×100 千円)の計200 千円が必要と概算した。また、最新の情報と意見交換のための国内海外での学会発表・打ち合わせの必要性から、国内外旅費が必要である。そして研究成果をまとめ学術雑誌に論文を投稿する予定であり、そのための費用として200 千円必要と考えている。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 図書 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] Induction of Colonic Regulatory T Cells by Indigenous Clostridium Species2011

    • 著者名/発表者名
      Atarashi, K. et. al.
    • 雑誌名

      Science

      巻: 331 ページ: 337-341

    • DOI

      10.1126/science.1198469

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Microbiota in autoimmunity and tolerance.2011

    • 著者名/発表者名
      Atarashi, K. ;Honda, K.
    • 雑誌名

      Curr Opin Immunol

      巻: 23 ページ: 761-768

    • DOI

      10.1016/j.coi.2011.11.002

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Microbiotal influence on T cell subset development2011

    • 著者名/発表者名
      Atarashi, K. ;Umesaki, Y. ;Honda, K.
    • 雑誌名

      Seminars in Immunology

      巻: 23 ページ: 146-153

    • DOI

      10.1016/j.smim.2011.01.010

    • 査読あり
  • [図書] 実験医学2011

    • 著者名/発表者名
      新幸二 ;本田賢也
    • 総ページ数
      2962-2967
    • 出版者
      腸内細菌によるT細胞誘導
  • [図書] 炎症と免疫2011

    • 著者名/発表者名
      新幸二 ;本田賢也
    • 総ページ数
      313-319
    • 出版者
      消化管IL-17産生細胞と制御性T細胞の分化と機能
  • [産業財産権] Composition, useful for e.g. treating chronic inflammatory bowel disease, and rheumatoid arthritis, comprises bacteria of Clostridium or active substance derived from bacteria2011

    • 発明者名
      本田賢也、新幸二、伊藤喜久治、田之上大
    • 権利者名
      本田賢也、新幸二、伊藤喜久治、田之上大
    • 産業財産権番号
      特許: WO2011152566-A2, A3
    • 出願年月日
      2011年06月03日
    • 取得年月日
      2011年12月08日
    • 外国

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公開日: 2013-07-10  

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