研究概要 |
無菌マウスとクロストリジウム属細菌定着マウスから上皮層を単離しDNAマイクロアレイ解析を行った。クロストリジウム属細菌定着により発現が上昇する遺伝子にはTgfb1, Ido1, Mmp9, Mmp12などTGFbまたはTGFbの活性化に関与する遺伝子が多く検出された。そこで、無菌マウスとクロストリジウム属細菌定着マウスの上皮細胞を培養し、上清中にTGFbが産生されるかを検討したところ、クロストリジウム属細菌定着マウスの上皮細胞で多くのTGFbが産生されていることが明らかになった。このことからクロストリジウム属細菌によるTreg細胞の誘導はTGFb依存的に行われていることが示唆された。 IL-10Venusマウスの大腸粘膜固有層からFoxp3+Venus+細胞とFoxp3+Venus-細胞をソーティングし、DNAマイクロアレイ解析により遺伝子発現を比較した。その結果、IL-10産生Treg細胞において、Gzmb、CTLA4などの抑制機能分子の発現が亢進していた。また同時にMAPkinaseなどのシグナル伝達分子の発現もIL-10産生Treg細胞に高発現していた。現在、Treg細胞からのIL-10産生メカニズムについて詳細に解析しているところである。 ヒトの腸内細菌にもマウス腸内に存在するTreg細胞誘導能を持つクロストリジウム属細菌と同様の細菌が存在しているのかを確かめた。ヒトの便を無菌マウスに投与すると大腸粘膜固有層のTreg細胞が顕著に増加した。増加したTreg細胞はHelios陰性であり、IL-10・CTLA4を高発現していることから、ヒトの腸内においてもマウス46株のクロストリジウム属細菌と同様に免疫抑制抑制能をもつ誘導性Treg細胞を増加する細菌が存在していることが明らかになった。現在、ヒト由来のTreg細胞誘導能をもつ細菌について詳細に解析しているところである。
|