研究課題
病原体認識レセプターであるToll Like Receptor (TLR) ファミリーは免疫細胞に高発現し、様々な免疫応答を惹起することで生体防御に必須の役割を果す。一方、TLRの過剰応答は自己免疫疾患の発症につながる。この為、TLR応答の厳密な制御は恒常性維持において必須であり、様々なTLR会合分子がTLR応答制御に関与する。我々は、新規に同定したTLR2会合分子であるEmp3のトランスジェニック(Tg)およびノックアウト(KO)マウスを作製し、同マウスの解析を網羅的に行った。in vitroの実験系において、Emp3のノックダウンは複数のTLRによる免疫応答を顕著に増長したが、Emp3のTgおよびKO由来の骨髄マクロファージおよび樹状細胞では、TLRリガンドに対する免疫応答(サイトカイン産生、CD40やCD86の細胞表面発現上昇)に優位な変化は認められなかった。以上の結果より、TLR会合分子であるEmp3はTLRによる免疫応答の制御に直接的には関与しないことが判明した。一方、全身性にEmp3を発現するEmp3 Tg/CAG-Creは23週齢までに100%が死亡し、その多くで拡張型心筋症様の症状を発症した。また一部個体では小腸炎の発症も認められた。しかしながら、CAG-Cre遺伝子を除いた全身性にEmp3を発現するEmp3 Tgマウスでは拡張型心筋症や小腸炎は全く発症しなかった。CAG-Creマウスが高率かつ無症候性に突然死することを考慮すると、Cre遺伝子の強制発現により誘導された何らかの異常をEmp3が増長した結果として拡張型心筋症などが発症したと考えられる。今後、CAG-Creマウスで誘導されていると予測されるERストレスなどがEmp3の発現変化でどのように影響されるのかを検討する必要がある。
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International Immunology
巻: 24巻,10号 ページ: 613-23
DOI:doi:10.1093/intimm/dxs068