消化管に局在する好酸球に着目し、粘膜面での恒常性維持に果たす役割に注目して解析を進めた。消化管に局在する好酸球はケモカインレセプターCCR3を発現しており、CCR3欠損マウスでは、その局在が優位に低下していた。従って、消化管における好酸球はCCR3とそのリガンドであるCCL11によって制御されていることが明らかとなった。 次に、炎症性腸疾患の病態形成における好酸球の役割を検討した。野生型マウスにデキストラン硫酸塩を飲ませて腸炎を誘発するモデルを用いて大腸炎症部位を解析したところ、好酸球を含め、好中球・単球・マクロファージといった細胞集団が主に消化管炎症部位に浸潤していることを明らかにした。しかし、CCR3欠損マウスに腸炎を誘導しても、その発症程度は野生型のマウスと大きな差は認められなかった。この原因を検討するため、炎症部位に浸潤してきた細胞群のTNF産生能を細胞内サイトカイン検出法を用いて検討した。その結果、主たるTNF産生細胞は好酸球ではなく、単球およびマクロファージであった。浸潤してきた好酸球は、定常状態の好酸球と比較して、MBPといった抗菌活性のある物質のmRNAの発現レベルは増加していた。これらのことから、消化管の好酸球は、侵入してきた腸内細菌の排除に一定の役割は果たしているものの、その細胞そのものが炎症細胞である可能性は低く、腸炎の発症に深く関与する細胞群ではないと推察された。 実際、単球・マクロファージは発現しているケモカインレセプターCCR2の欠損マウスでは、腸炎の軽減が観察された。これらのことから、今後は、単球・マクロファージに着目して解析を進める予定である。
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