pre-BCRはB細胞分化に重要であるだけでなく、近年では急性リンパ性白血病との関連が示唆されているが、その発現調節メカニズムについてはほとんどわかっていない。昨年度までに我々はpre-BCR発現終焉に関わる分子としてリソソーム膜分子であるLaptm5を同定し、機能解析を行うだけでなく、Laptm5欠損マウスを用いた実験から、生体においてもLaptm5がpre-BCRの発現終焉に関わることを報告した。 そこで本年度の研究ではこれまでの結果をさらに確実なものとするため、初代培養細胞を用いてpre-BCRを再構築し、Laptm5 存在あるいは非存在下でのpreBCR の細胞内各オルガネラへの移動を共焦点顕微鏡を用いて経時的に観察を行ったところ、細胞株の結果と同様にlaptm5存在下のみでリソソームにpre-BCRの集積がみられた。次にpre-BCRシグナルによってlaptm5の発現増加する際、どの分子が関わるかを遺伝子ノックダウン法で調べたところ、BLNK-Btkを介したpre-BCRシグナルによってlaptm5の発現が増加することがわかった。また、リソソーム阻害剤でpre-BCR発現終焉が抑制されたことから、オートファジーの可能性を検討したが、laptm5によるpre-BCR分解はオートファジー非依存性であることがわかった。 一方、Laptm5 欠損マウスでは自己抗体の増加が報告されている。そこでLaptm5 がプレB細胞における自己寛容に関与しているかを調べるため、野生型およびLaptm5 欠損マウスのプレB細胞における免疫グロブリンmu重鎖のレパトア解析を行ったが、両者で有意なレパートリーの違いはみられなかった。 最終的にこれらの結果をまとめ、研究成果はMolecular and Cellular Biologyに掲載された。
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