研究課題/領域番号 |
23790532
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
馬場 智久 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (00452095)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 胸腺 / 樹状細胞 / 制御性T細胞 |
研究概要 |
本年度は、胸腺内におけるT細胞の分化・教育機構の新規経路の確立、免疫研究における重要な関心事である自己・非自己の識別に関して理解を深めることを目的として、胸腺樹状細胞サブポピュレーションの1つであるSirpα陽性樹状細胞(Sirpα+ DC)の免疫学的役割について、詳細な解析を行った。その結果、以下の点を明らかにした。(1)Sirpα+ DCは、胸腺内において比較的大きな血管が豊富に存在している小葉間結合組織に局在しており、血中から漏出した抗原タンパクを効果的に取り込む能力を持つことがわかった。さらに、生理的条件下において、抗原を取り込んだSirpα+ DCは、T前駆細胞に抗原提示することで、制御性T細胞の分化を誘導することを明らかにした。(2)慢性炎症を伴うことが知られている腫瘍の形成過程においては、炎症性ケモカインの一つであるCCL2が、腫瘍組織から恒常的に過剰発現し、血液を介して胸腺に運ばれ、小葉間結合組織に沈着していることを観察した。その結果、CCL2のレセプターであるCCR2を発現しているSirpα+ DCの小葉間結合組織への集積が亢進することで、血中抗原タンパクの取り込み能力が増強された。(3)腫瘍を形成したマウスにおいては、T前駆細胞への抗原提示が増強された結果、制御性T細胞の分化誘導に代わって、アポトーシスによる負の選択過程が誘導された。また、遺伝子導入法によって作成した抗原タンパクを恒常的に分泌する腫瘍細胞をマウスに接種すると、抗原特異的なT前駆細胞に対して負の選択が誘導された。以上の結果から、胸腺Sirpα+ DCが抗腫瘍免疫寛容の誘導メカニズムの一端を担っている可能性が強く示唆された。これらの結果については、現在、論文投稿中であり、がん免疫研究領域において、重要な知見として意義あるものであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書の研究計画に記載した23年度予定の生理的条件下におけるSirpα+ DCの免疫学的役割の解明のみならず、24年度予定の免疫異常を伴う疾患の病態生理におけるSirpα+ DCの関与についても予期した以上の解析結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の研究結果から明らかになった、Sirpα+ DCの抗腫瘍免疫寛容への関与について、24年はさらに詳細な分子メカニズムの解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究費の主な使用目的としては、腫瘍を形成したマウスと未処置マウス由来の胸腺Sirpα+ DCにおける、機能決定因子の同定を目的とした遺伝子発現解析に必要な、分子生物学的研究試薬の購入を予定している。
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